経済産業省のお節介がキャッシュレス化の足を引っ張る
タクシーでも、大手タクシー会社はもともとクレジットカードや交通系ICカードでの支払いが可能で、最近ではOrigami、アリペイ、ウィーチャットペイといったQRコード決済に対応するタクシーも出てきた。ところが個人タクシーや零細タクシー業者となるといまだに現金以外はお断りというところが多い。
だが、街のラーメン屋や個人タクシーといった場面でこそ、キャッシュレス化のメリットが大きい。例えば、2人だけでやっているようなラーメン屋さんをよく見るが、そこでは調理をする人が現金を扱うことになる。保健所がそういうことは不衛生だからやってはいけないと指導しているはずであるが、この指導は必ずしも守られていない。最近のラーメン屋さんでは自動券売機で食券を買うようになっているので、保健所のご指導もだいぶ行き届いてきたようだが、あいにく高額紙幣しか手元にないときは、それまでチャーシューを切っていたご主人が、脂のギトギトついた手を布巾で拭いて両替に応じてくださる。
少額の支払いでも小銭がいらない
慌ててタクシーに乗って財布を開いたら1万円札と数百円分の硬貨しかなくて困った経験がある人は多いはずである。スーパーやコンビニではどんな金額の買い物であれ、1万円札を出しても何の問題もないが、タクシーだと代金が5000円以下の場合なら必ずといっていいほど「細かいのないんですか」と言われる。「あいにく持ち合わせがないんですが」というと、嫌そうに千円札の束でお釣りをくれる。こういう場合に「ではカードで」というと、もっと嫌そうな顔をされる。
このような街のラーメン屋さんや個人タクシーにおける困惑はキャッシュレス決済によって解消される。飲食店主やタクシー運転手にとってもキャッシュレス化のメリットは大きい。日本は治安がいいといっても、タクシー強盗や深夜営業するお店が強盗に遭う事件はかなり頻繁に起きている。もしタクシーやお店にポケットマネー程度の現金しか置いていないとなれば強盗に襲われる可能性はかなり低くなる。
ではなぜ街のラーメン屋や個人タクシーにキャッシュレス決済が普及しないのだろうか。経済産業省の『キャッシュレス・ビジョン』によれば、お店がクレジットカードを受け付けない理由の第一は、商品の代金から支払いサービス事業者に手数料を差し引かれること、第二は、導入によるメリットを感じられないことである。ICカードを利用した電子マネーを受け付けないのは、支払端末を備えるコストや手数料がやはりネックになっている。
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