映画『グレートウォール』を作った中国のコンテンツ帝国が崩壊の危機
ところが賈躍亭はここでなんと電気自動車(EV)を作ると言いだし、アメリカのEVベンチャー、ファラデー・フューチャーに投資しはじめた。賈躍亭はEVを2018年までに量産すべく今年7月までにすでに100億元余りを投資したといい、彼は楽視網の会長を辞めた後、EV生産のために立ち上げた「楽視汽車生態全球」という会社の会長に納まって、EV立ち上げに専念するためアメリカに渡った(『21世紀経済報道』2017年7月11日)。
EVのような新産業を切り開くには膨大な先行投資が必要である。中国では収益があがらないなかで先行投資を続けることを「カネを燃やす(焼銭)」という。ベンチャーのビジネスというのはどのみち「カネを燃やす」段階を経ることが避けられないが、楽視網を破綻の危機に追い込んでおきながら、なおも懲りずにカネを燃やし続けようとする賈躍亭に対して中国では非難囂々である。
賈躍亭が去った楽視網を引き継いで会長になったのは、大株主である不動産会社、融創中国を率いる孫宏斌である。実は楽視網は中国各地にかなりの土地を保有している。各地の地方政府は、楽視網が地元のコンテンツ産業を牽引してくれると期待して、楽視網が不動産開発をすると言えば喜んで土地を売ってくれたのである。楽視網は「ネットワーク・コンテンツ産業基地」を作るといった名目で北京、重慶、天津、浙江省、深セン、上海などにかなりの土地を取得した。こうした土地資産を売却するなどして有効に活用すれば当面の資金繰りの問題はある程度解決できるかもしれない(『経済参考報』2017年7月21日)。
インターネット関連企業のスキャンダルといえば日本で約10年前に起きた「ライブドア事件」を思い出す。本業で利益を得る仕組みが作れていないのに、投資家の期待が先行して資金が集まり、それで気が大きくなって他業種に乗り出すところなど楽視網にはライブドアと似たところがある。ベンチャーは燃やすためのカネを集めなければならないから、多かれ少なかれホラ吹きでなければならないし、ホラを吹いたら金が集まったという成功体験があると、味をしめてホラを繰り返してしまうのかもしれない。違うところは、ライブドアに比べて楽視網のほうが調達した金額が1桁多いことと、ライブドアの場合には虚偽の業績報告で投資家を騙したが、楽視網の場合にはこれまでわかっている限りで言えばまだ大言壮語のレベルにとどまっていることである。
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