経済統計を発表できない大連の不況
大連の海水浴場。不況とは思えない賑わい(2016年8月)
<回復基調にある中国経済のなかで、一人沈んでいるのが遼寧省の大連。遼寧省が正直な経済統計を発表したせいで、それまで大連が描いていた架空の成長シナリオは崩れた。さてその実態は?>
中国経済全体は、現在回復基調にある。2017年第1四半期(1~3月)のGDP成長率は6.9%だった。本当にこんなに高いのかという疑問は依然つきまとってはいるけれど、変化の方向、つまり6.7%だった2016年に比べて上向いているということはかなり信じられる。2015年以降、成長率の数字が景気の変化の方向を見るうえでも怪しくなっていただけに、経済だけでなく経済統計の質も回復基調にあるようである。
そうしたなか一人沈んでいるのが遼寧省である。2016年の経済成長率はマイナス2.5%と、中国の地方としては異例のマイナス成長だった。2017年第1四半期もプラス2.4%で、全国のなかでダントツの最下位だった。
【参考記事】アリババ帝国は中国をどう変えるのか?
その遼寧省の経済を牽引してきた大連市に先週行ってきた。大連市は遼寧省のGDPの3割前後を占めている。
私が行った期間がちょうど中国の子供の日(6月1日)を挟んでいたため、海岸の海洋レジャー施設には大勢の客がつめかけ、駐車待ちの車が列をなしていて、不況に沈んでいる感じはしなかった。地下鉄は3路線開通し、前回大連に来た2014年よりも車がさらに増え、案内してくれた東北財経大学の先生の車もトヨタからベンツに代わった。星海湾のヨットハーバーのかなたに見える湾を跨ぐ全長6キロの星海湾大橋(下の写真)は前回来た時にはなかった。
はじけた不動産バブル
だが、大連市のなかの一つの区である旅順(旅順口区)に行くと、経済の沈滞の様子をそこかしこに感じた。幹線道路沿いにはリゾートマンション付きのゴルフ場が作られていたが、途中で資金がショートしたらしく、マンションが建設半ばで放置されていた。旅順には多くの住宅が建設されたが余り売れていないという。旅順から大連市中心部へは30㎞ぐらいの距離なので、ベッドタウンとして発展できるようにも思ったが、旅順と大連市中心部を結ぶ鉄道の便数が少ないため、市内に通うには不便だという。
旅順と大連を結ぶ道路沿いにはいくつも別荘地が開発されている。なかには「普羅旺斯(プロヴァンス)」なんてすてきな名前のついた別荘地もある。富裕層の消費力を当てにしたバブリーな住宅や施設ばかりが盛んに作られた挙げ句、売れなくて不良債権化するという展開は日本のバブルを再現しているようだ。
【参考記事】自転車シェアリング--放置か、法治か?
大連には石油化学、機械、造船など重工業の大企業が数多い。同時に日本企業の進出も盛んだし、主に日本向けのソフトウェア開発やビジネスアウトソーシングといったビジネスも盛んである。こんなに多様な産業を持っている都市などなかなかないから、どこかに活路が見いだせそうな気もするがそうでもないようである。
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