日本の新幹線の海外輸出を成功させるには
それにしても菅長官の発言は他国の大統領がかかわった決定に対するコメントとしては外交的配慮を欠くものではなかったかと思います。
「インドネシアで高速鉄道が持続可能な事業として成立するよう熟考して提案したが採用してもらえなかったことは残念です。なぜ採用してもらえなかったのかをよく反省し、もっとご満足いただける案を提案しますので、次はよろしくお願いします」──たとえ腹の中は煮えくりかえっていても、「トップ・セールスマン」としてこれぐらいのことは言ってもよかったかと思います。
さて、中国でインドネシア高速鉄道商戦をどのように報じているかを見てみると、意外に冷静で、例えば『21世紀経済報道』2015年10月1日付けでは、中国側の「勝利」、とカッコつきで書いております。なぜカッコをつけるかというと、中国側がこの仕事をとるためにかなり無理をしたからです。すなわち中国政府が鉄道駅を建設することや、インドネシアに合弁の車両工場を設立して、鉄道車両を生産し、インドネシア国内だけでなく他のアジア諸国にも輸出することを約束したのだそうです。
要するに、中国政府はインドネシアに対して調子のいいことを言っていろいろ約束してしまったけれど果たして大丈夫なのか、という疑念がカッコのなかに込められているのです。
インドネシアで受注できなかったのは残念ですが、今後新幹線を海外に売り込んでいくにあたっては、売り込み先のニーズに対応するように新幹線の優位をアピールしていく必要があります。どうも日本は相手側が重視するポイントを外したアピールをしているのではないかと私は疑っております。
日本の鉄道会社は新幹線が数分に一便という頻度で出発することや複雑なダイヤを時刻表通り正確に運行していることを大変誇りにしています。しかし、遠距離の都市間の旅客量が日本ほど多い国は世界に多くないのです。数分に一便出発しています、と言われても外国の人々は「わが国にはそんなニーズないな」と思うことでしょう。
私は中国の高速鉄道にもかなりの回数乗りましたが、私の経験の範囲で言えば、中国の高速鉄道も時刻表通りに運行されています。乗り心地に関しては日本の新幹線に比べて遜色ないです。なにしろ中国高速鉄道のシートは日本の新幹線のものを模造したものですから、座っている感覚はまったく同じです。
時間通りの運行は日本の専売特許ではない
これがフランスのTGV、ドイツのICTになりますと、シートの半数は進行方向に背を向けていますので、運悪くそういう席にあたったら背中の方向に車両が走っていくこととなり、あまり心地よいものではありません。
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