「李克強指数」が使えないわけ
民間企業に生産額、利益額、生産量など尋ねると、相手が口を濁すという経験はこの時だけではありません。今はスマホで名を馳せている某社を訪問した時など、従業員数を尋ねても「数千人」と答えるばかりでした。この会社は今でもホームページ上に会社の売上だとか従業員数といったデータをまったく掲載しておりません。
中国の国有銀行は民間企業に余り融資してくれないし、融資する場合も融資先の経営データをみるのではなく接待やリベートなどで決めると言いますから、民間企業には経営業績をよく見せるインセンティブはないのです。税金のことを考えると経営業績をむしろ悪く見せたほうが得だということになります。そんな民間企業が統計調査にだけは正直に経営状況を報告するとは考えにくいのです。
そんなわけで民間企業の真の実力は中国のGDP統計のなかで十分とらえられていないのではないかと私は推測しています。まして、国有重工業・鉱業の状況しか反映していない「李克強指数」など見ていたのでは中国経済の現状は把握できないと思うのです。
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