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美しいビーチに半裸の美女、「中国のハワイ」にまだ足りないもの
拝金主義では一流サービスは育たない
美しい自然と完璧なレジャー施設、それにカジノまで揃えば海南省は無敵の観光地となるのではないか。最初はそう思ったのだが、滞在するうちに弱点も見えてきた。ハードウェアは一流でもサービスは三流なのだ。サービスを支えるのは人間であり、人間の質を決めるのは教育だ。設備は輸入できても教育レベルは一朝一夕で変えることはできない。
【参考記事】教育論議から考える、日本のすばらしいサービスを中国が真似できない理由
今回の旅でも痛感する出来事があった。三亜市ではいたるところにハイビスカスが植えられ、南国ムードを盛り上げている。写真が趣味の私も撮影でおおいに楽しませてもらった。ただハイビスカスを中国語でどう呼ぶのかがわからない。そこでホテルの従業員に聞いてみたが「知らない」との答え。町中に咲き乱れているというのに、だ。高学歴の大学生ならわかるだろうと、EOの講演会場にいたボランティアに聞いてみたがやはり知らなかった。
教育とは何も机の前で勉強することだけではない。常日ごろ目にしている草花について興味を持ち、どんな植物か調べたり人に聞いたりしようという好奇心を持つことも、教育の大事な要素だ。教科書の暗記に優れていたとしても、好奇心がゼロのままでは使い物にならないではないか。
中国には「向銭看」という言葉がある。「向前看」(前を見る)の懸け詞になっていて、「金だけを見る」、すなわち拝金主義を意味している。中国社会の風潮を示す言葉だ。その傾向は年々強まるばかり。金になることならば勉強するが、それ以外のことには好奇心を持とうともしない。こんな姿勢では一流のサービスを育てることは難しい。
ある知人にこの話を紹介したところ、彼は深く同意してこんな話を教えてくれた。
中国でホテルに泊まっていた時のこと。夜中に突然ドアをノックされた。扉を開けてみると、2人の女性が立っている。「マッサージを呼んだでしょ」というが、そんな記憶はない。「間違いだったみたい。でもせっかくだからよかったらマッサージをしませんか?」と交渉してきた。マッサージ料金は600元(約9600円)。ただし1000元を支払えば性的なサービスがあるという。呼ばれてもいないのに押しかけてくる強引な売り込みだが、ついついスケベ心を出して片方の女性を選び、部屋に入れてしまった。
ところが、いざことに及ぼうとしたところ、その女性はとんでもないことを言い出した。「性的サービスは約束したが、体を触る契約はしていない。触るなら追加で500元を支払え。さもなくば体に触ることなく挿入しろ」というのだ。体に触れずに挿入とは、とんちでもひねり出さないかぎりとても不可能な話だ。「そんなの不可能だ!」と怒った知人に対し、「じゃあ胸だけは触ってもいい。他の場所を触るならば追加料金」と女性。
あまりにもご無体な要求に知人はげんなり。なにかする気も失せてしまったので、女性を部屋から追い出したという。ちなみに1000元は前金で支払っていたのでまるまる損となった。違法なマッサージに手を出したのだから自業自得といったところか。
「体に触れずに挿入せよ」という摩訶不思議なシチュエーションについつい笑ってしまったが、中国社会の「向銭看」ムードを象徴的に示すエピソードではないだろうか。契約の穴をついて少しでも多くの利益を得ようとするが、そのためには相手を不快にさせても気にしない。こんな無法なことをやればその客との取引は二度とないだろうが、一期一会の焼き畑農業で十分だという三流サービスの考え方だ。
マッサージ嬢だけではなく、中国人の多くが同じような思考回路を持っている。最高の体験を提供してリピーター客を作るのが一流のサービス。それを理解できるようになるにはまだまだ長い時間が必要だろう。
【参考記事】いま中国の企業家や投資家が知りたい3つのこと
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