コラム

担い手不足解消へ ローカル線の低コスト自動運転とBRT化で変わる地方の移動

2022年08月30日(火)13時05分

JR西日本はソフトバンクなどとともにデジタルテクノロジーを駆使した次世代のローカル線のあり方を模索し、これに近い「自動運転・隊列走行BRTサービス」プロジェクトを進めている。

バスは自動運転も進んでおり、隊列走行の自動運転システムを使えば、運転士を先頭に一人配置し、需要に合わせて小型バス・大型バス・連節バスなど何台かを連ねて走行することもできる。

バス車両を乗車場所に間隔を詰めて止める正着制御の技術を使えば、有人での手動運転よりもバリアフリーとなり、高齢者や車いす利用者にもやさしいサービスになる。

線路のメンテナンス、保守の係員、鉄道の運転士の育成も不要なためローコストで維持できる。

プロジェクトでは滋賀県野洲市のテストコースで22年8月までに隊列走行試験、23年までに運用面の試験と技術確立、20年代半ばの社会実装を目指している。

ただし、鉄道でなくなることへの反対の声は大きい。筆者もできるだけ今のかたちの鉄道を残してほしいと思う。しかし、まずは新たなシステムがどのような仕組みなのか知ることをおすすめしたい。

ひたちなかBRT、気仙沼BRTなど軌道を活用したBRTがすでに実用化され、トラックでの隊列走行の実証実験が高速道路などで行われている。筆者は乗車体験を通じて、この動きは地域を活性化させる可能性を秘めていると感じた。

鉄道の廃線は社会問題として取り上げられるが、クルマの自動運転と比べればほとんど注目されていない。ローカル線での自動運転システムの導入と専用道を活用したBRT・隊列走行はすべてを解決する魔法ではないが、ローカル線の存廃問題解決の一助になることは間違いない。

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プロフィール

楠田悦子

モビリティジャーナリスト。自動車新聞社モビリティビジネス専門誌『LIGARE』初代編集長を経て、2013年に独立。国土交通省の「自転車の活用推進に向けた有識者会議」、「交通政策審議会交通体系分科会第15回地域公共交通部会」、「MaaS関連データ検討会」、SIP第2期自動運転(システムとサービスの拡張)ピアレビュー委員会などの委員を歴任。心豊かな暮らしと社会のための、移動手段・サービスの高度化・多様化とその環境について考える活動を行っている。共著『最新 図解で早わかり MaaSがまるごとわかる本』(ソーテック社)、編著『「移動貧困社会」からの脱却 −免許返納問題で生まれる新たなモビリティ・マーケット』(時事通信社)、単著に『60分でわかる! MaaS モビリティ革命』(技術評論社)

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