コラム

「コロナ前のように戻ることはない」鉄道各社の変革と2022年のMaaS展望

2021年12月28日(火)20時35分

日本で決済機能として普及しているのがSuica、ICOCA、PiTaPaなどの交通系ICカードだ。情報の統合の成果として、経路検索アプリが普及している。鉄道利用者の感覚としてはデジタル化が進んでいるように思うかもしれない。

しかし、業界内では「公共交通はデジタル化が遅れている」という自覚がある。Googleマップを越えるアプリは登場しておらず、交通系ICカードは切符の効率化と決済に特化したサービスで、データ活用を念頭に置いた設計になっていないことが多い。また、日本で発展した交通系ICカードの問題点も見えてきた。利用者が何人いたかというデータを取ることはできるが、どんな人がどう移動しているのか──など個客を把握するのは難しい。

外来のMaaSという考え方をベースにしたデジタル化の取り組みは、一通り検討されたように感じる。デジタル化や利用者の利便性を向上するためにMaaSは必要と各社は考えているが、輸入したMaaSの概念に当てはめる方法では、民間企業が公共交通を担う日本の実情やニーズを満たせないことが分かってきている。MaaSの推進は「あるべき論」から始まったが、自社の経営戦略を進める中で自然と行きつく流れの方が日本では合うと感じる。

デジタル化、MaaSを経営戦略に盛り込む鉄道・バス各社が増えてきた。しかし、いろいろと取り組んではみたものの、まだ軌道には乗っていない。戦略に描くも具体化に至っていない企業も多い。

2022年は、改めてここまでの取り組みを振り返り、公共交通のデジタル化による利便性の向上やデータの利活用について検討されるべきだろう。次世代の決済のあり方やグループ内に蓄積された顧客データの統合・活用など、まだ触れられていないMaaSの真髄に迫っていく1年になるのではないかと考えている。

ニューズウィーク日本版 日本人が知らない AI金融の最前線
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年3月3号(2月25日発売)は「日本人が知らない AI金融の最前線」特集。フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに[PLUS]広がるAIエージェント

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


プロフィール

楠田悦子

モビリティジャーナリスト。自動車新聞社モビリティビジネス専門誌『LIGARE』初代編集長を経て、2013年に独立。国土交通省の「自転車の活用推進に向けた有識者会議」、「交通政策審議会交通体系分科会第15回地域公共交通部会」、「MaaS関連データ検討会」、SIP第2期自動運転(システムとサービスの拡張)ピアレビュー委員会などの委員を歴任。心豊かな暮らしと社会のための、移動手段・サービスの高度化・多様化とその環境について考える活動を行っている。共著『最新 図解で早わかり MaaSがまるごとわかる本』(ソーテック社)、編著『「移動貧困社会」からの脱却 −免許返納問題で生まれる新たなモビリティ・マーケット』(時事通信社)、単著に『60分でわかる! MaaS モビリティ革命』(技術評論社)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

オープンAIが1100億ドル調達、アマゾンやソフト

ビジネス

独CPI、2月は2.0%上昇に鈍化 エネ価格下落で

ワールド

クリントン元米大統領、エプスタイン氏の犯罪「全く知

ワールド

海運大手マースク、スエズ運河から迂回 紅海周辺情勢
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
特集:日本人が知らない AI金融の最前線
2026年3月 3日号(2/25発売)

フィンテックの進化と普及で、金融はもっと高速に、もっとカジュアルに

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力空母保有国へ
  • 2
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからくりとリスク
  • 3
    中国で今まで発見されたことがないような恐竜の化石が発見される...ほかの恐竜にない「特徴」とは
  • 4
    ウクライナが国産ミサイル「フラミンゴ」でロシア軍…
  • 5
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 6
    がん治療の限界を突破する「細菌兵器」は、がんを「…
  • 7
    トランプがイランを攻撃する日
  • 8
    住宅の4~5割が空き家になる地域も......今後30年で…
  • 9
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 10
    習近平による軍部粛清は「自傷行為」...最高幹部解任…
  • 1
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医師がすすめる意外な健康習慣
  • 2
    「水道水」が筋トレの成果を左右する...私たちの体には濾過・吸収する力が備わっている
  • 3
    村瀬心椛は「トップでなければおかしい」...スノボの謎判定に「怒りの鉄拳」、木俣椋真の1980には「ぼやき」も
  • 4
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 5
    少女買春に加え、国家機密の横流しまで...アンドルー…
  • 6
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
  • 7
    「#ジェームズ・ボンドを忘れろ」――MI6初の女性長官…
  • 8
    カビが植物に感染するメカニズムに新発見、硬い表面…
  • 9
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 10
    米国の中国依存が低下、台湾からの輸入が上回る
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story