コラム

「コロナ前のように戻ることはない」鉄道各社の変革と2022年のMaaS展望

2021年12月28日(火)20時35分
MaaS

(写真はイメージです) metamorworks-iStock

<コロナ禍で利用者を大きく減らしたJRや大手民鉄など鉄道各社は、人々の働き方や生活様式が従来の形に戻らないことを前提にしたビジネスモデルを打ち出し、変革を図っている>

9月30日に新型コロナウイルスの流行による4度目の緊急事態宣言が解除され、新幹線や在来線に乗る人が増えてきている。

しかし、オミクロン株など変異ウイルスの感染拡大によって不透明な先行きについて懸念する鉄道会社やバス会社が多い。コロナ前の働き方や生活様式には戻らないという予測をもとに、デジタルを活用した効率化と新たなニーズへの対応を経営戦略に含めた事業者も少なくない。

鉄道各社の2021年のコロナによる影響と、22年のMaaSにまつわる動きを考えてみたい。

傷む公共交通、依然として2割以上減も

「コロナですっかり"傷んで"しまった」

公共交通の担当者は、新型コロナウイルス感染症の拡大と予防対策による外出自粛で利用者が減少してしまった現状をそのように表現する。

JR東日本は2019年のコロナ前と比較し、21年10月と11月の在来線関東圏は約70%、新幹線は約50%の水準が続き、その後回復すると想定。足元ではこの水準よりも良い状況で、11月の新幹線の予約状況も回復傾向に。ただし、感染第6波のリスクも考慮した計画とし、在来線は約85%、新幹線は約80〜85%と見込んでいる(2021年10月決算発表)。

JR西日本の11月の運輸収入は、2019年比で71.1%、12月は14日までで72%。定期券は前々年の消費税改正の先買い影響分を除くと11月は88%。山陽新幹線の利用状況は、対前々年比で11月が60%、12月が14日までで67%。

JR九州は定期収入が約85%程度、定期外収入が約65%。緊急事態宣言期間の長期化による外出・移動自粛等の影響を受け、定期外収入を中心に厳しい状況が続いており、引き続き鉄道事業においてコスト削減を図るも営業赤字が続く見込みだ(2021年11月4日決算発表)。

このようにJRや大手民鉄など鉄道各社では、長きにわたる感染症対策によって新たな生活様式が定着する中、コロナ前の約2割減で推移し、元には戻らないと予測する。さらに、これまで割合の大きかった運輸収入が減少し、収益構造が変化している。2020年に引き続き、損益分岐点を下げるためにコスト削減を実施するなど、働き方改革や新しいニーズへの対応に追われている。

プロフィール

楠田悦子

モビリティジャーナリスト。自動車新聞社モビリティビジネス専門誌『LIGARE』初代編集長を経て、2013年に独立。国土交通省の「自転車の活用推進に向けた有識者会議」、「交通政策審議会交通体系分科会第15回地域公共交通部会」、「MaaS関連データ検討会」、SIP第2期自動運転(システムとサービスの拡張)ピアレビュー委員会などの委員を歴任。心豊かな暮らしと社会のための、移動手段・サービスの高度化・多様化とその環境について考える活動を行っている。共著『最新 図解で早わかり MaaSがまるごとわかる本』(ソーテック社)、編著『「移動貧困社会」からの脱却 −免許返納問題で生まれる新たなモビリティ・マーケット』(時事通信社)、単著に『60分でわかる! MaaS モビリティ革命』(技術評論社)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

貿易分断で世界成長抑制とインフレ高進の恐れ=シュナ

ビジネス

テスラの中国生産車、3月販売は前年比11.5%減 

ビジネス

訂正(発表者側の申し出)-ユニクロ、3月国内既存店

ワールド

ロシア、石油輸出施設の操業制限 ウクライナの攻撃で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 8
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story