コラム

日本のMaaS普及は本当に遅れているのか?

2021年02月15日(月)18時35分

日本のMaaSは本当に遅れているのか。

海外でMaaSについて現地取材をして感じるのは、日本の移動に関するサービスが他国と比べて劣っているわけではなく、むしろ勝っている点も数多くあるということだ。

東京では、スパゲッティのように複雑に絡み合う路線に最新モデルの電車、バス、タクシー車両が随時投入され、丁寧なメンテナンスを受けながら運行されている。

民間鉄道事業者による車両や人の相互乗り入れの連携も進んでいる。小さな街にも鉄道やバスが走る日本の公共交通の定時制や安全性は、他国と比較してもピカイチだ。多くの欧州の国よりもサービス供給量や関係する事業者数はずっと上だ。補助金頼りの欧州と違い、黒字経営を保っている交通事業者もある。

ドイツでは交通事業者が連携して作ったMaaSアプリが地域ごとに存在し、用途やエリアが変わるたびに新しいアプリを立ち上げ直す必要がある。全国津々浦々の鉄道やバスなどの乗換検索を1つのアプリで検索できる日本のアプリの方が便利だと感じることも多い。

欧州には改札のない国もあるが、日本は各駅に改札があり、交通系ICカードで異なる交通事業者も1枚で決済ができる。Suicaはクレジットカードと連動し、自動的にお金がチャージされ、コンビニ、飲食店、ドラッグストアなどありとあらゆるお店で使える決済機能が付いている。スマートフォンやスマートウォッチでも使える。

スマートフォン発祥の地アメリカにMaaSのインタビューで訪れた際に「アメリカにはスマートフォンやスマートウォッチなどデバイスと連携した交通系ICカードがないので、日本はすばらしい」と絶賛されたこともある。

欧州では交通以外の決済ができないので、コンビニや飲食などありとあらゆる決済の手段となっている日本の交通系ICカードや、駅構内で展開されている店舗事業に対する評価は非常に高い。スイスでは最近になって駅の建物内に飲食店や服飾店などが増えたが、日本の駅活用の例を参考にしたものだという。

日本独自のMaaSレベルを

欧州と日本では、移動に関係するサービスの環境は異なる。欧州発のMaaSレベルに照らし合わせても当てはまらないことも多い。またサービスや決済は統合されず、個別に分かれていた方が便利な場合もある。

日本のMaaSは2018年度に経済産業省や国土交通省が中心となって、集中的に政策検討が行われた。それにのっとり、2020年度と21年度に全国各地で実証実験が行われている。

日本が政策的にMaaSに取り組み始めてから3年が経つ。移動の質は向上したのか。そろそろ中間的な評価を行い、今後の政策の見直しや更新をする時期に差し掛かっているのではないかと思う。

その際に、日本のMaaSレベルを作ってみてはどうだろうか。日本の実情にふさわしく、目指すべき社会への前進を描ける基準だ。日本の交通インフラシステムを用いたアジアの地域もあるため、他国の範例とすることもできるだろう。

プロフィール

楠田悦子

モビリティジャーナリスト。自動車新聞社モビリティビジネス専門誌『LIGARE』初代編集長を経て、2013年に独立。国土交通省の「自転車の活用推進に向けた有識者会議」、「交通政策審議会交通体系分科会第15回地域公共交通部会」、「MaaS関連データ検討会」、SIP第2期自動運転(システムとサービスの拡張)ピアレビュー委員会などの委員を歴任。心豊かな暮らしと社会のための、移動手段・サービスの高度化・多様化とその環境について考える活動を行っている。共著『最新 図解で早わかり MaaSがまるごとわかる本』(ソーテック社)、編著『「移動貧困社会」からの脱却 −免許返納問題で生まれる新たなモビリティ・マーケット』(時事通信社)、単著に『60分でわかる! MaaS モビリティ革命』(技術評論社)

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