コラム

復活したロシアの軍事力──2015年に進んだロシア軍の近代化とその今後を占う

2015年12月28日(月)21時16分

 陸軍ではイスカンデル-M戦術ロケットシステム2個旅団分、戦車・その他装甲車両1172両、ロケット・火砲システム148基、各種自動車2292両が受領され、陸軍の装備近代化率は35%になった。一方、陸軍とは独立した精鋭部隊である空挺部隊(VDV)は新型パラシュート4000セットを受領し、装備近代化率は41%となっている。

 海軍は多目的潜水艦2隻と水上艦艇8隻を受領した(装備近代化率は39%)。

 ロシア軍の弱点とされてきた指揮通信及び偵察システムについては、無人偵察機が1720機に達した。2011年時点における同種のシステムは180機に過ぎなかったとされることから、4年で10倍近くに増加したことになる。ただし大部分は陸軍が運用するごく小型のシステムであり、米国のように数十時間に及ぶ長時間滞空や攻撃が可能なものはまだ出現していない。また、1万8000セットの新型無線通信システムが配備され、近代化率は43%となった。

活発化する活動

 ハードウエエアの近代化に加え、それを操る人員の訓練頻度も増加した。国防省拡大幹部会議の発表によると、2015年には5回の抜き打ち検閲(戦闘即応態勢をチェックするために実施される予告無しの演習)が5回実施され、延べで30万人の人員、1100機以上の航空機、3万両以上の戦闘車両、280隻の艦艇が動員された。

 これとは別に、毎年9月に実施される定例の秋季大演習(今年は中央アジア方面を担当する中央軍管区で実施)には人員16万人、航空機250機、戦闘車両7000両、艦艇30隻が動員されたほか、11月にはやはり定例の戦略核攻撃演習が実施された。

 以上の結果、2015年の訓練実績は、過去最高であった2014年を上回る頻度となった。以下、国防省拡大幹部会議で示された各種指標を掲げる。

 車両操縦手1人あたりの年間走行距離
  自動車 610km(2014年は500km)
  戦車 420km(同350km)

 パイロット1人あたりの年間飛行時間
  航空宇宙軍 135時間(同121.5時間)
  海軍航空隊 83時間(同75時間)

 艦艇乗員1人あたりの年間航海時間
  水上艦 100日(同93日)
  潜水艦 92日(同87日)

 空挺部隊のパラシュート降下回数
  20万1164回(同20万135回)※
  ※このうち半数は「困難な状況下の降下」
 
 これと並行して、ロシア軍は2015年にシリアへの軍事介入を実施している。国防省拡大幹部会議の発表によると、ロシア航空宇宙軍は12月初頭までに約4000回の戦闘ミッションを実施し、8000目標を破壊した。また、航空宇宙軍及び海軍は合計21万4000トンの物資及び燃料をシリアに輸送したとしている。

プロフィール

小泉悠

軍事アナリスト
早稲田大学大学院修了後、ロシア科学アカデミー世界経済国際関係研究所客員研究などを経て、現在は未来工学研究所研究員。『軍事研究』誌でもロシアの軍事情勢についての記事を毎号執筆

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:「AIよ、うちの商品に注目して」、変わる

ワールド

エアバス、A320系6000機のソフト改修指示 A

ビジネス

ANA、国内線65便欠航で約9400人に影響 エア

ワールド

アングル:平等支えるノルウェー式富裕税、富豪流出で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場の全貌を米企業が「宇宙から」明らかに
  • 4
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 5
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 6
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 9
    エプスタイン事件をどうしても隠蔽したいトランプを…
  • 10
    メーガン妃の「お尻」に手を伸ばすヘンリー王子、注…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 4
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 7
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story