コラム

【欧州議会選】英国の2大政党は大敗か?──新党「ブレグジット党」は10万人の支持獲得

2019年05月17日(金)20時00分

新党「ブレグジット党」のファラージ党首(右) Scott Heppell-REUTERS

<3月末の予定だったEU離脱が果たせなかったイギリスの各政党は、内政混乱のなかで迎える欧州議会選で再度、離脱か残留かの立場を試される>

5月23日~26日にかけて、欧州連合(EU)に加盟している国では欧州議会選挙が行われる。英国での投票は23日になる。

英国はEUからの離脱(「ブレグジット」)を目指しており、当初は3月29日に離脱するはずだった。ところが英政府とEU側がまとめた離脱協定案(どのように離脱するかを規定)を英議会が承認せず、与党・保守党と最大野党・労働党との間で妥協案をまとめるべく話し合いが続いているが、先行き不透明の状態だ。

メイ首相自身の将来は風前の灯。政府は6月上旬、「離脱合意法案」を採決にかける予定だが、可決の見通しは低いと言われている。

首相はかつて、先の離脱協定案が通れば辞任するとしていたものの、なかなかこれが実現せず、業を煮やした保守党内の離脱強硬派が「辞任日を明確にして欲しい」と迫っていた。

5月16日、とうとう結論が出た。保守党の平議員で構成される「1922年委員会」と会合を持った首相は、6月上旬までに辞任日を明確にすることに合意した。

メイ首相への不満の種は?

保守党内でのメイ首相に対する不満の理由は、EUと合意した離脱協定案が離脱派も残留派も満足させない内容であった上に、下院が協定案を3回も否決したのに、その内容を変えようとせず、とうとう「3月29日には、離脱する」という有権者への約束を果たせなくなった点だ。

5月上旬の地方選挙で、保守党は1300議席以上を失ってしまった。2017年6月の総選挙(下院選)でも、メイ首相率いる保守党は議席を減少させており、「メイ氏がトップでは、次の選挙に勝てない」という思いが、保守党内で今まで以上に大きくなっている。

野党・労働党との協議も、党内で大反発を引き起こした。英国では大陸の欧州諸国のようにほかの政党と協力しながら政権を発足させる伝統がなく、野党はあくまでも「敵」だ。しかも、労働党は、離脱後の英国は関税同盟に参加し続けるべきと主張しており、保守党内の離脱派議員にしてみれば、「これでは離脱の意味がない」のである。

プロフィール

小林恭子

在英ジャーナリスト。英国を中心に欧州各国の社会・経済・政治事情を執筆。『英国公文書の世界史──一次資料の宝石箱』、『フィナンシャル・タイムズの実力』、『英国メディア史』。共訳書『チャーチル・ファクター』(プレジデント社)。連載「英国メディアを読み解く」(「英国ニュースダイジェスト」)、「欧州事情」(「メディア展望」)、「最新メディア事情」(「GALAC])ほか多数
Twitter: @ginkokobayashi、Facebook https://www.facebook.com/ginko.kobayashi.5

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 5
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story