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「少数派」石破政権はこれから、3つの難題に直面する
有権者の怒りの本質は?
ドイツでは社会民主党(SPD)のオーラフ・ショルツ首相が財政政策の対立から、連立を組む自由民主党(FDP)のクリスチャン・リントナー財務相を罷免し連立政権が崩壊。少数与党としての信任投票・議会解散を経て、来年2月に総選挙をせざるを得ない状況に追い込まれている。
小党を取り込んだ連立政権の樹立は政権基盤を強固にする半面、小党の離脱が政権自体の瓦解を招く契機ともなり得る。つまり小党が連立政権の生殺与奪の権を握ることがあるのだ。石破首相は部分連合や連立政権に内包される、そうしたジレンマに向き合う綱渡りの国会運営を余儀なくされる。
次の問題は政治改革だ。総選挙敗北の主因が「政治とカネ」問題であったことから、石破政権は旧文通費(調査研究広報滞在費)の使途公開と残金返還、政策活動費の廃止、第三者機関の設置、個人献金を促進する税制優遇措置の拡充などを柱とする政治資金規正法の年内再改正を目指している。なぜ総選挙前の通常国会で実現させなかったのか、という落選議員の恨み節が聞こえてきそうだが、「覆水盆に返らず」で、政務活動費の廃止や企業団体献金の禁止は相当程度に野党側の主張が取り入れられるだろう。
しかし、改革の方向性は間違ってはいないが不十分だ。旧文通費は「定額の渡し切り」を前提とするから残金返還の問題が発生するのであり、民間企業と同じような「経費の実費精算制度」を導入すればよいだけだ。第三者機関を立法府に置くか行政府に置くかが議論となっているが、組織を新設するのではなく、既にある会計検査院を有効活用する手もある。石破政権が年内の再改正を急ぐあまり議論を深めず、国民の怒りの根源が「国会議員の特権性」に対する反感にあることを等閑視すると、元のもくあみになる可能性が高い。
派閥パーティー券問題が国民の強い批判を浴びたのは、収支報告書への不記載そのものの問題というよりも、議員が還流を受けたり手元に留保したりしたパーティー券売上分について税務申告せず、脱税していたに等しいと受け止められたからだ。その不平等性、金銭感覚の弛緩が物価上昇と生活苦にあえぐ国民の怒りを招いた。
党本部が非公認候補者の政党支部に公認候補者と同額の2000万円を支給した「2000万円問題」に対する有権者の怒りの本質も、そこにある。そうした怒りに石破首相はどう向き合うのか。
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