コラム

英王室の静かなる危機...「安全運転」で支持率維持に努めるチャールズ国王、頭痛の種は相変わらずの次男ヘンリー

2023年09月12日(火)20時26分

しかし英国の若者層(18~24歳)の王室制度支持派はわずか37%。それより多い40%が共和制への移行を求めている。王室制度を支持する世論は65歳以上で80%、50~64歳で67%、25~49歳で56%と年齢が下がるにつれ、その割合は低下する。若者層ではヘンリー公爵とメーガン夫人への好感が否定派を上回っている。

58%は「王室制度は英国にとって良いもの」と考える一方で、悪いものとみているのはわずか21%。21%はどちらでもないと答えた。若者層では良いと答えたのはわずか30%で、同じ30%が英国にとって悪いと考えていた。65歳以上では77%が王室制度は英国にとって良いものと考えていた。

王室との関係を断ち切ったメーガン夫人

53%が王室は支出に見合う価値があると答える一方で、34%は見合わないと考えていた。48%が王室制度を誇りに思うと回答したのに対し、30%は誇らしいとも恥ずかしいとも思わないと答えていた。ヘンリー公爵との関係修復に務め、安全運転に徹するチャールズ国王はコロナ後遺症、ウクライナ戦争、インフレ、生活費の危機を乗り切ることができそうだ。

しかし頭痛の種はヘンリー公爵だ。メーガン夫人がチャールズ国王の戴冠式(5月6日)を欠席したことからも分かるようにメーガン夫人は王室との関係を自ら断ち切った。王室よりも家族第一のヘンリー公爵がチャールズ国王とウィリアム皇太子との関係修復に動くことも考えにくい。国王は対立するより紛争状態を凍結するのが一番と考えているようだ。

ヘンリー公爵はメーガン夫人ら家族のプライバシーを守るため、英大衆紙(タブロイド)の発行会社を相手取り複数の訴訟を起こしている。パパラッチに追いかけられ、最愛の母ダイアナ元皇太子妃を交通事故で失ったトラウマをヘンリー公爵は抱えている。6月にはロンドンの法廷で反対尋問を受け、19世紀以来初めて証言台に立った上級王族となった。

保守系英紙デーリー・テレグラフは「なぜヘンリー公爵は訴訟中毒になるのか」という記事で「彼は自分自身を、英メディアの行き過ぎた取材や報道に対する道徳的十字軍のリーダーだと考えている。彼を突き動かしている目的意識が本格的な中毒とまではいかなくとも、強迫観念に突き動かされている可能性も考えられる」と指摘している。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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