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死ぬために動員されるロシア新兵たち...「現場」は違法行為が溢れる無秩序状態に
無益な攻勢のため死ぬ運命にある消耗品
英国の戦略研究の第一人者でイラク戦争の検証メンバーも務めた英キングス・カレッジ・ロンドンのローレンス・フリードマン名誉教授は最新の有料ブログで「『キャノン・フアダー(大砲の餌食)』は無益な攻勢や露出した陣地の防衛のために死ぬ運命にある消耗品としての新兵のことを言う」と書いている。
現在ではウクライナでの危険な戦いに駆り出される不幸なロシア兵を表現する言葉として使われる。プーチン氏が部分動員を発表するや否やツイッターに「#キャノン・フアダー」というハッシュタグが立った。動員の狙いは軍の慢性的な人手不足を解消することにある。しかしロシア軍は兵士を指導できる将校の大半を失ってしまったとフリードマン氏は指摘する。
「ナチスとの戦いでヨシフ・スターリンは『量は質をもたらす』と語った。しかし大砲を備えた防御陣地への量の攻撃は『大砲の餌』を作り出す。その一方で防御に使えばウクライナの反攻計画を複雑にし、ロシア軍がすでに十分に潜伏している地域の攻略を難しくする可能性がある。ロシア軍司令部はより多くの兵員を投入して時間を稼ごうとしているのだ」
バルト海を通ってロシアとドイツを結ぶ天然ガスパイプライン「ノルドストリーム1、2」でガス漏れの発生が相次いでいる。エネルギー価格の高騰でイタリア総選挙ではかつてプーチン氏を称賛した右派3党の連合が勝利し、発足したばかりのトラス英政権がダッチロール状態に陥った。戦争が長引けば長引くほど欧州では厭戦気分が強くなるのは避けられない。
「ボルシチに入れる肉にウジがわいた」
しかしプーチン氏最大の応援団であるロシア国営放送の女性記者は動員がいかに無秩序に行われているかを伝え、1905年に黒海艦隊の戦艦ポチョムキンで起きた反乱に言及した。日露戦争の余波で起きたこの反乱はセルゲイ・エイゼンシュテイン監督の映画『戦艦ポチョムキン』(1925年公開)で描かれ、日本でも有名だ。
「ボルシチに入れる肉にウジがわいたと乗組員が抗議すると医者は食べても全く問題ないと言い放った。乗組員がスープの不味さを訴えたところ、艦長に撃たれた。艦長は海に投げ込まれ、乗組員は艦を乗っ取る。『腐った肉はもうたくさんだ』という叫びから反乱は始まった。小さな不満が大きな怒りと絶望を呼び起こすことがある」(フリードマン氏)
戦艦ポチョムキン・モーメント(瞬間)が来るのが早いか、欧州の厭戦気分ががまんの限界を超えるのが早いのか。厳しい冬を前にしたこの数週間が文字通り、勝負の分かれ目になる。結果を急いで無理に攻めれば、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領もプーチン氏と同じ轍を踏む恐れがある。