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仏大統領選を揺さぶる「1千万人」問題と、ルペンを封じる「第三極」の戦術投票
INSEEによると、18年時点で190万人が極貧状態にあり、さらに17万人が極貧に陥る恐れが指摘された。ルーベでメランション氏の得票率が53%にも達したことはこの都市がマクロン改革から完全に取り残されたことを意味する。今回ルペン氏とメランション氏が得票率を伸ばしたこともマクロン氏への期待がしぼみ、不満が膨らんだことを物語る。
ルーベでは廃屋を1ユーロで提供する住宅政策も
「マクロンは富裕減税を進め、燃料税引き上げに端を発した『黄色いベスト運動』では保安機動隊のゴム弾で抗議者が目を負傷した。ルーベにあった工場はバングラデシュやトルコに行き、代わりにサービス産業を育てようとしたが、上手く行かない。ルーベの市長はここでは米ニューヨークの五番街と貧困に喘ぐブロンクスが混在すると自嘲気味に語っている」
ピッカーさんはこう話した。かつてフランスで一番貧しい街にランク付けされたルーベの街を歩くと廃屋が目につく。廃屋を1ユーロ(139円)で提供し、住民を増やそうとしたこともある。しかし人通りや商店は少なく、まるでゴーストタウンのように感じられた。「取り残された都市はメランション氏の、地方の小さな町や村はルペン氏の支持者が多い」と言う。
マクロン氏とルペン氏のTV討論は生活、外交、年金、環境、移民政策などをテーマに3時間近くに及んだ。視聴者数は1560万人。1660万人が視聴した17年の大統領選より100万人少ないが、オンラインで見た人は含まれていない。ルペン氏は「マクロン氏は『金融のモーツァルト』と呼ばれながら、経済手腕は非常に悪い」と攻撃した。
ウクライナ戦争に関して、ルペン氏はロシア産原油・天然ガスの制裁は「フランス国民に多大な損害を与える」と疑問を呈した。マクロン氏はルペン氏がロシアのクリミア併合を支持し、ルペン氏の国民連合がプーチン政権に近いロシアの銀行から900万ユーロ(約12億5200万円)の融資を受けていることを改めて指摘した。
「あなたはロシアの力、そしてプーチン氏に依存している」と非難するマクロン氏に、ルペン氏は「融資はモスクワの影響を受けていることを意味しない。私は完全に自由な女性だ」と反論した。欧州連合(EU)離脱に関して「EUを変えたいのであって離脱したいのではない」とルペン氏が言葉を濁すと、マクロン氏は「本心を隠しているだけだ」と追及した。