コラム

新型コロナ、封印された「第2波」 日本はいつになったら「失敗の本質」から学べるのか

2020年08月24日(月)10時30分

「日本政府がこれまでの失敗から学んで、クラスターベースの対策から検査拡大・効果的な接触追跡・完全なデジタル疫学へ移行するとともに、遺伝子データやビッグデータ分析など最先端の科学を導入しない限り、日本の医療は再び崩壊の危機に瀕することになる」

欧州最悪の被害を出したイギリスには言われたくないのだが、英大学キングス・カレッジ・ロンドンの大津欣也教授(循環器学)は「イギリスでは日本の専門家会議に当たる緊急時科学諮問グループ会合(SAGE)に独立性があり科学が重要視されているのは評価される」と言う。

都市封鎖(ロックダウン)を強く主張した英インペリアル・カレッジ・ロンドンのニール・ファーガソン教授は外出禁止令に違反して人妻と密会していたことが発覚し追放された。それでも大津教授は「政府の説明責任と透明性についてもイギリスの方が日本より優れている」という。

学べない日本とゼロリスク信仰

どの国の対策が正解だったかはパンデミックが終息してからでないと最終的には判断できない。正解がないからこそ政府や政治指導者は「なぜ」その時その政策をとったのかきっちりとした説明が求められる。

大津教授は「専門家会議から分科会になってから特に科学が政府の政策を追認する傾向が強まった。例えば西村大臣がこういう政策をする、その是非を分科会に問うと言うが、それはおかしな話」と指摘する。日本では科学に耳を傾けるより先にいつも政府の結論があるのだ。

政府も分科会も自分たちとは異なる主張への「なぜ」に答えようとしないから、国民は何を信じていいか分からなくなるのだ。

日本は「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と世界からもてはやされた1980年代に稠密なシステムを構築した。それが今でも機能し続けているため大胆に変革できない「イノベーションのジレンマ」に陥っている。硬直化した政治と官僚システム。遅々として進まない自動化・無人化とデジタル化...。

さらに言えば、ありもしないゼロリスクへの信仰、無謬性と完璧主義の弊害に蝕まれている。日本では「失敗」は許されない。だからコロナの「第2波」も絶対に存在してはならないのだ。そこに失敗から学ばないというより、学べない日本の本質がある。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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