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欧州ではしか(麻疹)が大流行の恐れ 半年で感染者4万1000人超の異常な勢いを煽るフェイクニュース
新興の市民政党「五つ星運動」の候補者は「ワクチンの強制接種は自殺行為」と猛反対し、イタリア北部の独立を唱える「同盟」は「ワクチン接種にはイエスだが、義務化はノー」と異を唱えた。背景には権威やエリートに対する不信感がマグマのごとく渦巻いている。
欧州懐疑主義政党の「五つ星運動」と「同盟」は総選挙に勝利し、連立政権を樹立した。そして、選挙公約通り、ワクチン接種義務化に待ったをかけ、市民の間に混乱を広げている。
英国でも15年の総選挙でこんな話を耳にした。
EU離脱を唱える英国独立党(UKIP)に投票した有権者のうち、はしか、おたふく風邪、風疹予防の新三種混合(MMR)ワクチンは安全ではないと考える人は28%にのぼり、大人全体の平均である6%を大幅に上回った。
迷信の発端は20年前
根も葉もないMMRワクチンへの不信感は20年前、英国の胃腸科医師アンドリュー・ウェイクフィールド氏が世界的権威の医学雑誌ランセットに発表した論文に逆上る。
自閉症の子供12人のうち8人の保護者が「MMRワクチン接種から数日間のうちに子供の様子がおかしくなった」と証言しているという内容だった。同医師は子供たちに大腸内視鏡や腰椎穿刺といった侵襲的な検査まで施してワクチン接種と自閉症、腸管障害の間には関係があると唱えた。
報道陣を集めて記者会見を開いたため、世界中が大騒ぎになった。他の医師が論文をもとに研究してもMMRワクチン接種と自閉症の関係は再現できなかった。04年になって英日曜紙サンデー・タイムズが、ウェイクフィールド医師がワクチン会社の損害賠償責任を立証するため落ち度を探していた事務弁護士から資金提供されていたことをスクープする。
論文はデタラメだったと結論付けられ撤回され、同医師は医師免許を取り消された。がしかし、「MMRワクチンを接種すると自閉症になる」という迷信は今も、物凄い勢いでソーシャルメディアを通じて拡散し続けている。
ソーシャルメディアの全盛でフェイク(偽)情報が氾濫(はんらん)し、本当に重要で信頼できる情報が相対化している。権威は失墜し、エリートは信頼を失った。懐疑主義とポピュリズムに乗っ取られた政府や自治体も信用できない時代に突入している。
世界最強の権力者である米国の大統領が主要メディアを「フェイクニュース」と罵倒し、「国民の敵」というレッテルを貼って恥じないご時勢だからこそ、われわれ一人ひとりが情報発信の大切さと作法を考える必要がある。