消費者への支援はもう無理? トランプ関税で、大幅な方針転換を迫られた「景気対策」の行方
政府は製造業への本格支援を実施するのか
自動車産業は裾野が広く、製鉄業界の売り上げの相当な割合が自動車向けであり、化学や機械、半導体など他業界の自動車依存度も高い。あらゆる業界で業績悪化や労働者の失業リスクが高まっている状況であり、政府はこうした事態を受けて全国約1000カ所に特別相談窓口を設け、トランプ関税の影響がどのような形で各産業に及ぶのか情報収集を始めている。
ここで問題となってくるのが、製造業への悪影響が甚大だった場合、政府が本格的な支援を実施するのかどうかである。従来の政府のスタンスであれば、基幹産業に甚大な影響が及ぶ場合、最優先で各種支援策を策定する流れになっていたはずだ。
ところが近年は、インフレの急激な進行や、企業の賃上げが進まないことなどから、消費者の生活をいかに改善するのかという問題の優先順位が高まっている。自民党が少数与党に転落した今国会では、基礎控除の見直しを通じて手取りを増やすという国民民主党の案がある種のブームになったという現実もある。
財源を確保できるのであれば、大規模な業界支援と生活者支援を両立させることも不可能ではないだろうが、日本の基幹産業が大打撃を受けるという前提に立てば、今回の経済対策は高い成長を実現するためのものではなく、マイナスを埋めるだけのものにならざるを得ない。
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