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維新の案は具体的だが政治的な障壁は限りなく高い
政策論という観点からすると、維新の案は明確に財源を示した上での提言であり、より具体的と言える。この点においては相応に評価できるものの、政治的な障壁は限りなく高い。
維新は医療費削減の根拠として、OTC類似薬(市販薬と同じ成分で、保険適用を受けて病院から処方される薬)の保険給付の見直しなど、薬価引き下げを提案しているが、製薬業界や医療業界からの猛反発は確実といえる。製薬業界は与党のみならず、一部の野党も強力に支援しているので、国会での議論は紛糾せざるを得ない。
加えて、維新が現在、明示している改革プランだけで4兆円を削減することは難しく、この数字を実現するためには精神病床や療養病床も含めた病床数の削減にも切り込む必要がある。実際、日本の精神病床数は欧米の3~20倍など異常な状態となっており、入院から社会全体でのケアに切り替えれば、かなりのコスト削減が見込める。
だが、企業や地域社会における負担が増えるのは確実であり、仮に正論であったとしても日本において実行に移すのは難しいだろう。
近年、インフレが進行し国民生活が苦しくなっていることもあり、世論はあらゆる問題に対して近視眼的になっている。この状態で、実施までに時間がかかる医療費削減という政策が、現役世代にどの程度、刺さるのかは定かではない。
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