コラム

石破首相・トランプ大統領の首脳会談が「大成功」と言えるワケ...日本企業の「利益」とは?

2025年02月20日(木)18時19分

今回の日本側の提案は、実は「定石どおり」

日本製鉄によるUSスチール買収に対しても、一貫して反対の意向を示してきた。トランプ氏は交渉好きとされ、一連の要求は別の要求を通すための材料にすぎないとの見方もあるが、トランプ氏の真意がどこにあるのか分からないため、日米交渉は難航が予想された。

過去の日米交渉を振り返ると、貿易赤字が問題視された場合、日本の輸入枠拡大や現地生産化などで乗り切るケースが多かった。今回もトヨタなど日本メーカーによる工場建設や、アメリカ産天然ガスの輸入拡大を提案しており、定石どおりの展開とも言える。


だが、今の日本にとって安価なエネルギー調達先の確保は喫緊の課題であることに加え、合意内容にはアラスカ州における石油・天然ガスの合弁事業も含まれているので、日本企業にとっても利益が大きい。

また、今のアメリカは「アメリカ・ファースト(アメリカ第一主義)」一色となっており、名門企業であるUSスチールを日本人が完全買収することへの抵抗感は強い。最終的な同社への出資条件はこれから詰めることになるが、経営権の完全取得を回避するスキームのほうが政治的に軋轢が少ないことは言うまでもない。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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