コラム

予想以上のGDP成長率、実は「数字のマジック」...まったく喜べない日本経済の本当の姿を解説

2023年09月06日(水)18時37分

緩和継続だけでは不十分だと示された

輸入が減ってもそれを国産品で代替できれば、むしろ経済にはプラスとなるが、産業の空洞化が進んだ日本ではすぐに国産品を増やすことが難しい。加えて言うと、物価が上昇しているにもかかわらず、賃金は上がっていないので、消費者は必要不可欠ではない製品やサービスへの支出を切り詰めている。そうなると輸入コストが増加した分だけ消費が削られることになり、これが個人消費の数字を悪くしたと考えられる。

かつての日本では、円安になれば景気が良くなるとされていたが、輸出競争力が低下した今、それは過去の常識となりつつある。日銀は今のところ大規模緩和策から転換する方針は示しておらず、現状の金融政策が続く限り、円安と物価上昇が継続しやすい。

日本経済を本気で上向かせるには、緩和策を継続するだけでは不十分であり、物価上昇に対抗できるような供給力の強化、つまり企業の経営改革が必要であることを、今回のGDPは改めて示したと考えてよいだろう。

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プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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