コラム

ついに日本が物価指数でアメリカを逆転...本格化したインフレを、退治できない日本の危険な未来

2023年08月02日(水)19時09分

日銀の植田総裁も利上げに慎重な姿勢

新しく日銀総裁に就任した植田和男氏は、いわゆるアベノミクス人脈で総裁になった人物ではなく、政治的にはフリーな立場にある。その植田氏ですら、当分の間、政策を変更しないという方針を示していることの背景にはこうした切実な事情が存在する。

しかも植田氏は、政策変更の条件として「賃金上昇が必要」とも発言している。物価だけでなく賃金も政策変更の要件に加えた場合、当分の間、政策は変えられないことを意味する。

そうなるとアメリカが金利の引き下げに転じたとしても、それを上回る日本円の大量供給が続くため、大きな円高要因にはなりにくい。理論上はあり得ない展開だが、両国の物価上昇率が逆転した後も、日本では低金利が続き、円安が進みやすい状況が続くシナリオも十分に考えられる。

そうなると輸入物価の上昇は止まらず、国民生活は引き続き苦しいままかもしれない。

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プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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