コラム

防衛費を「倍増」させると、むしろ日本の「戦争能力」は弱まる? 仕組みを解説

2022年08月17日(水)17時48分

しかしながら、日本の財政状況を考えると、税で増額分を調達するのは極めて難しい。一般会計の歳入に占める税収の割合は6割しかなく、残りは国債発行による借金である。

現在、ゼロ金利が続いていることから、利払いはわずか8兆円で済んでいる。だが日銀が金融正常化を行って金利が上昇した場合、利払い費が急増するのは間違いなく、仮に2%に金利が上がっただけで、最終的な支出額は20兆円近くに達する。

増額された防衛費と合わせると25兆円の支出増であり、これを税収でカバーするのはほぼ不可能だろう。

自民党の税調トップが、「防衛費を増額するなら、社会保障費の切り下げが必要」という発言を行って批判を浴びたが、今の予算に削れるところはほとんどないのが実状だ。仮に国債で調達した場合、財政リスクが高まり、戦争継続能力も低下せざるを得ないだろう。

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プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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