コラム

もはや中国に「世界の工場」の役割は期待できない──成長鈍化で起きること

2022年06月14日(火)20時30分

中国の輸出金額は過去2年で急激に増加しており、現在では20年6月との比較で約1.5倍になった。だが輸出数量は21年以降は横ばいで推移しており、輸出金額増加分の多くは製品価格の上昇によるものである。

これは世界的な資源価格の高騰を受けたものだが、中国の人件費高騰も大きく影響している。中国の人件費が上がるにつれて、低付加価値の製品の輸出から撤退する中国メーカーが増えると予想される。

西側各国は中国に代わる製品供給基地を探す必要に迫られるが、中国のように安価なコストで大量の製品を製造できる国はほかに存在しない。各国は、低付加価値の製品についても割高な価格で購入せざるを得なくなり、現在、進行しているインフレがさらに激化することが懸念される。

中国の成長率が鈍化するということは、中国が安い製品を売る国から、安い製品を買う国に変貌するということであり、日米欧と中国が相互補完関係でなくなることを意味している。

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プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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