コラム

「ロシア支援者」のそしりを受けるか、中国に権益を手渡すか...日本の苦しい二択

2022年04月20日(水)10時46分

もう1つの懸念材料は、仮に撤退した場合、その権益が誰に渡るのかという問題である。日本が手放した権益については、ロシア産の天然ガスを欲しがっている中国が獲得する可能性が高く、そうなると中国を大きく利することになる。

日本はかつて、アメリカなど西側各国がイランに対して制裁を実施しているにもかかわらず、独自外交と称してイランとの石油開発プロジェクトを継続した過去がある。結局、アメリカとイランの対立が長く続き、最終的には日本も撤退に追い込まれ、投資を回収することはできなかった。

西側が制裁を強化しても、日本は一線を画しロシアとの協力関係を維持するのか、中国にメリットがあっても対ロ制裁を重視するのか、日本は重要な選択を迫られている。厳しい状況だが、今回の一件は日本にとって何が本当の国益なのかを考えるきっかけになる。国民的議論を行うことが重要だろう。

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プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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