コラム

為替相場を見ている人も気付かないうちに進行している「悪い円安」

2021年08月31日(火)20時58分

筆者は69年生まれなので70年代は子供時代だったが、当時、夢中になっていた模型工作の分野で海外製品の価格が突出して高かったことや、左党だった父が海外のウイスキーは高いとぼやいていたことなど、物価の感覚はそれなりに覚えている。

当時と比較してグローバル化による価格低下が進行するなど、全く同じ環境とはいえないが、70年代に近い水準まで日本が貧しくなったという話は体感的にも理解できる。

本来、デフレなら円の価値が高まり、為替が円高になることで物価の違いが調整されるものだが、それが機能せず、内外価格差で事実上の円安になっているのが現実である。価格差は日本の国力低下を反映したものなので、ここから円高が一気に進み、物価が調整されるとは考えにくい。

為替がいつ動きだすのかは誰にも分からないので断言はできないが、当面、日本円に大きな動きはなく、輸入コストの増大によって経済格差を実感する流れが続くだろう。次に為替が動きだすのは日本経済のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)がもう一段悪化したタイミングである可能性が高い。

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プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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