為替相場を見ている人も気付かないうちに進行している「悪い円安」
筆者は69年生まれなので70年代は子供時代だったが、当時、夢中になっていた模型工作の分野で海外製品の価格が突出して高かったことや、左党だった父が海外のウイスキーは高いとぼやいていたことなど、物価の感覚はそれなりに覚えている。
当時と比較してグローバル化による価格低下が進行するなど、全く同じ環境とはいえないが、70年代に近い水準まで日本が貧しくなったという話は体感的にも理解できる。
本来、デフレなら円の価値が高まり、為替が円高になることで物価の違いが調整されるものだが、それが機能せず、内外価格差で事実上の円安になっているのが現実である。価格差は日本の国力低下を反映したものなので、ここから円高が一気に進み、物価が調整されるとは考えにくい。
為替がいつ動きだすのかは誰にも分からないので断言はできないが、当面、日本円に大きな動きはなく、輸入コストの増大によって経済格差を実感する流れが続くだろう。次に為替が動きだすのは日本経済のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)がもう一段悪化したタイミングである可能性が高い。
2024年4月23日号(4月16日発売)は「老人極貧社会 韓国」特集。老人貧困率は先進国最悪。過酷バイトに食料配給……繫栄から取り残され困窮する高齢者は日本の未来の姿
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら