コラム

補助金もCOCOAもワクチン予約も...日本の行政DXはなぜこんなに稚拙なのか

2021年06月10日(木)06時33分

単に分散しているだけなら統合すればよいのだが、情報を収集・管理する手法も統一されていないので、データ形式や分類基準などに一貫性がなく、単純なデータ統合も難しい。

アメリカではコロナ対策給付金が自動的に政府から振り込まれたり、ドイツでは持続化給付金に相当する支援金がごく簡単な手続きで受け取れるなど、日本との違いが際立ったが、両国がこうしたシステムを迅速に構築できたのは、紙の時代から厳格なデータ管理を行ってきたからである。

一部の論者は日本人がプライバシーに過敏になっており、データ統合にむやみに反対していることが遅れの原因と主張しているが、それは違う。

一部の国民が行政によるデータ管理を信用していないのは、紙の時代から情報管理がずさんであり、IT化すればさらに大きな被害が生じるのではないかと懸念しているからである。文書が誰の権限でどんな形式で管理され、責任の所在がどこにあるのか明確な説明があれば、多くの国民は納得するはずで、それができていればデジタルへの移行は難しいことではない。

ニューズウィーク日本版 英語で学ぶ国際ニュース超入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年5月6日/13日号(4月30日発売)は「英語で学ぶ 国際ニュース超入門」特集。トランプ2.0/関税大戦争/ウクライナ和平/中国・台湾有事/北朝鮮/韓国新大統領……etc.

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米3月PCE価格2.3%上昇、前月から鈍化も予想上

ワールド

米・ウクライナ資源協定、自動的な譲渡なし 米に優先

ビジネス

FRB年内利下げ幅予想は1%、5月据え置きは変わら

ワールド

ウクライナ、米との資源協定「24時間以内」に署名の
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 2
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・ロマエとは「別の役割」が...専門家が驚きの発見
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 7
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 8
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 9
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 10
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story