コラム

「街はコロナ危機」でも「市場は株高」が、意外と長引きそうな理由

2020年12月02日(水)12時17分

しかも脱炭素と社会のIT化は連動しており、従来の集中電力システムからITを駆使した分散電力システムへの転換が進み、従来の産業秩序が激変する可能性も指摘される。コロナ危機は、石油を大量消費し、人やモノが世界を行き交う従来の経済システムを見直すきっかけとなっており、市場はこうした変化を先取りしている可能性がある。

これはどちらかというとポジティブな要因だが、インフレ懸念はその逆だ。各国はコロナ危機で大規模な財政出動を余儀なくされており、バイデン政権の誕生でアメリカの財政赤字が拡大するのはほぼ確実である。経済学の常識として、財政悪化は金利上昇とインフレをもたらすので、不動産など一部の銘柄はインフレ・ヘッジを目的に積極的に買われることになる。

過度なインフレと金利上昇は景気には逆効果だが、長期的には名目上の株価を押し上げる効果があることに変わりはない。今回の株高は複数の要因が絡み合った相場であり、目先、過熱感から下落に転じることはあっても、意外と長く続くかもしれない。

<本誌2020年12月8日号掲載>

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プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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