コラム

「中国・デジタル人民元は失敗する」と願望で分析しては、日本が危ない

2020年11月05日(木)12時02分

中国は近年、東南アジアやアフリカ諸国に対する経済支援を強化しており、経済援助と引き換えにこうした地域にデジタル人民元を流通させる戦略と考えられる。現時点における人民元の世界シェアはごくわずかだが、中国国内と支援国の個人決済がデジタル人民元に置き換えられれば、「チリも積もれば」で最後には莫大な取引量になる。

これは、権力の中枢である都市部ではなく、農村を拠点に都市を包囲して革命を成功させるという毛沢東思想(人民戦争理論)に通じるものがある。国共内戦当時、国民党はアメリカの全面支援を受け、圧倒的な物量だったが、最終的にはゲリラ戦を繰り返す中国共産党に敗北。同党は中国全土を支配するに至った。

日本は、中国のすることは全てうまくいかないという願望に基づいた分析ばかりで、現実を無視する傾向が強い。ドル覇権が消滅して最も困るのは、マイナーな通貨しか持たず、全てをドル経済圏に依存した日本である現実を忘れるべきではないだろう。

<本誌2020年11月10日号掲載>

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プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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