コラム

大幅なマイナス成長の日本、生き残りへの選択肢は2つしかない

2020年03月06日(金)11時40分

リーダーには日本の厳しい現実を国民に受け入れさせることが求められる ISSEI KATOーREUTERS

<消費増税ショックに新型コロナが追い討ちをかける日本経済。それでもさらなる増税を求める声が上がるほど日本は追い詰められている>

2019年10~12月期のGDPが大幅なマイナスとなった。昨年10月に実施された消費増税の影響であることは間違いないが、この期は新型肺炎の感染拡大前なので、次の四半期にはさらに景気が悪化するとの見方も出ている。

政府は社会保障費の増大が不可避であることから消費増税を進めており、IMF(国際通貨基金)も2030年までに消費税を15%まで引き上げるよう提言している。果たして日本経済は一連の増税に耐えられるのだろうか。

2月17日に発表されたGDP速報値は、物価の影響を考慮した実質(季節調整済み)で1.6%のマイナス(年率換算で6.3%のマイナス)だった。消費税を5%から8%に増税した14年4~6月期もやはり1.9%のマイナス成長(同7.4%のマイナス)となっている。

日本経済は消費増税を実施するたびに景気が激しく落ち込んでいるわけだが、その影響はリーマン・ショックや東日本大震災に匹敵する水準となっている。08年秋のリーマン直後の四半期GDPは最大4.8%のマイナス、震災では最大1.4%のマイナスだったことを考えると、増税の影響の大きさが分かる。

だが経済学的な常識として、消費増税が行われたとしても、徴収された税金は政府支出を通じて国民所得になるので、増税だけでここまで景気が悪くなることはあり得ない。消費増税によって景気が落ち込んだというよりも、消費増税に耐えられないレベルまで日本経済は弱体化していると解釈したほうがよいだろう。

本来は産業構造の転換が必要

ではこうした状況であるにもかかわらず、なぜ政府は増税を断行しているのだろうか。それは言うまでもなく少子高齢化の進展で社会保障費の増大が不可避だからである。

日本の政府予算は100兆円とされるが、それはあくまで一般会計に限った話である。年金、医療、介護は一般会計とは異なる会計で処理されており、その規模は既に100兆円を突破している。つまり政府の一般会計予算の総額とほぼ同額の社会保障費が別に存在しており(一部重複あり)、ここを基準にした場合、ムダの象徴とされる公共事業費(約6兆9000億円)も誤差の範囲でしかない。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

午後3時のドルは154円後半、欧州PMIでユーロ一

ワールド

アングル:米政権の長射程兵器攻撃容認、背景に北朝鮮

ワールド

11月インドPMI、サービスが3カ月ぶり高水準 コ

ビジネス

S&P、アダニ・グループ3社の見通し引き下げ 米で
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story