ゼロから分かる安倍政権の統計不正問題
どちらのケースも許されることではないが、従事者による「手抜き」を100%防ぐことはできない。統計学的な信頼性という観点からすれば、想定された範囲内のトラブルとみてよいだろう。
日本の国家統計は貧弱
では、深刻な統計不正は毎月勤労統計だけなのかというと必ずしもそうとは言い切れない。実はあらゆる統計の集大成ともいえるGDPの正確性についても疑問視する声が少なからず上がっている。日本銀行は非公式ながらもGDPの算出方法について疑義があるとするペーパーを公表したし、一部の専門家はGDPの数字が上向くように修正されていると批判している。
GDPは最もマクロ的な統計なので、それ自体にある程度の曖昧さがあり、現時点において日本のGDP推計に問題があると断言することはできない。だが、先進諸外国と比較して、GDPを中心とした日本の国家統計が貧弱であり、改善の余地が大きいことは紛れもない事実となっている。
統計というのは近代民主国家における礎であり、これが信用できなくなったら民主国家としては終わりである。
国家が持つ対外的パワーというのは、経済力や軍事力などハード面だけにとどまるものではなく、統計の信頼性や情報公開などソフト面の影響が極めて大きい。こうしたソフト面でのレベルの違いが国際交渉力に大きく関係していることを、私たちはもっと認識すべきである。
<2019年3月12日号掲載>
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