世界同時株安でも、日本で楽観的な声が聞こえてくる理由
そこで、にわかに脚光を浴びているのが、日本郵政グループの運用資金である。日本郵政グループは「ゆうちょ銀行」と「かんぽ生命」という2つの金融機関を擁している。ゆうちょ銀行は現在、約206兆円の資金を運用しているが、このうち日本株はわずか3.6兆円と全体の1.7%にとどまっている。かんぽ生命も、全体の運用資金84兆円のうち、株式が占める割合はやはり1.7%である。
日本郵政グループの西室社長は向こう3年間でリスク資産を14兆円増やす意向を示している。これが実現した場合、数兆円の資金が国内の株式市場に向かうことはほぼ間違いない。GPIFの株式シフトよりも大きい金額となる可能性もあり、株価がもう一段上昇するというシナリオが現実味を帯びてくる。
■これが最後の切り札となる可能性が高い
財政面での後押しも期待できる。麻生財務大臣は「現時点で補正予算は考えていない」と発言しているが、すでに与党内部からは早期の補正予算成立を求める声が高まっている。
実際、足元の景気はあまりいい状況とはいえない。内閣府が8月17日に発表した2015年4~6月期のGDP(国内総生産)速報値は、物価の影響を除いた実質でマイナス0.4%、年率換算ではマイナス1.6%となった。マイナスは予想されていたが、個人消費が前期比0.8%減と大きく落ち込んでいることに加え、在庫の増加が目立っている。消費の低迷で在庫が増加している可能性が高く、景気が腰折れするリスクが高まっている。
大型の補正予算にゆうちょ・かんぽの株式シフト、さらに日銀による追加緩和が加われば、株価の押し上げは十分に可能だろう。だが、これらは政府が持つ最後の切り札でもある。郵政グループが目標とする組み入れ比率に達した後は、政策的な立場で株を買う主体はいなくなる。このときに持続的な経済成長が実現し、純粋に日本株に投資をする投資家が現れなければ、株価は大幅な調整を迫られるだろう。
今回の株価上昇がやっかいなのは、年金財政と株価がリンクしていることである。GPIFの運用がマイナスとなった場合には、GPIFは年金給付維持のために株式の売却を余儀なくされ、さらに損失が拡大するという悪循環に陥る可能性がある。官製相場の効果は絶大だが、弾が尽きた後の下落はより大きなものとなるかもしれない。
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