参院選後に岸田政権を待つガバナンスなき世界
参院選後の岸田政権はしばらく大型選挙に悩まずに済むが…… ISSEI KATOーREUTERS
<値上げラッシュで反自民の火が付きかねないが、主要国の政府は既に統治困難な状況にある>
参議院選挙まで2週間弱。これを何とか乗り切れば大型選挙がない至福の時期が3年も続く。それまでは我慢の一手というわけで、岸田内閣は発足以来、定見がないという批判をも気にせず波風を立てないことを第一にやってきた。
それが奏功して参院選は自民党が勝利し、自公で多数議席を維持できるというのがこれまでの見通しだ。ところが火の付いたような値上げラッシュが始まったところで、反自民にも火が付きかねない。
改選定数が1つしかない「1人区」は全国で32あり、ここではその時の機運が結果を大きく変える。実際、2007年の参院選ではそれが故に自民党は改選議席64中37しか獲得することができず過半数議席を失い、第1次安倍政権は退陣。衆参両院の間で「ねじれ」が生じて政権が毎年代わるようになった。ガバナンスの喪失だ。
大変だ。戦争がすっかり身近になった今の危ない世界で日本は他の諸国に伍していけないではないか、と思って世界を見渡すと、主要国はほぼ例外なくガバナンスを失っている。
6月19日の総選挙でフランスの与党は過半数を大幅に下回り、マクロン大統領はこれから5年、大きく手足を縛られる。ドイツではショルツ首相をトップに政権を取ったばかりの社会民主党が州議会選挙で大敗を繰り返し、アメリカの圧力でロシアの天然ガス輸入を削減する一方で石炭発電への依存を復活させるという、自傷行為を強いられている。
そのアメリカではインフレが止まらず、中間選挙で民主党が上下両院の多数議席を失うのはほぼ確実。加えてインフレ退治のための急速な利上げが金融バブルを崩壊させて、リーマン危機のような不況を起こすかもしれない。その混乱の中でトランプが大統領に復活し、アメリカを専制国家にしてしまうかもしれない。
自由、民主主義という近代文明の基本理念は維持不可能。経済が伸びないなかで、何千万もの人間が織りなす利害の相克をうまく仕切ることも、ほぼ不可能。それができないのなら近代国家の維持も不可能、ということになる。やはり「近代の終焉」がメガトレンドなのか?
近代に代わるポスト・モダンの時代には「国家」は後景に退いて「個人」が主要な役割を果たすというバラ色の予測もあったが、民族、諸組織、諸人種が相争う無法の時代になるのか?
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