「就活ばかり」日本の若者が世界に取り残される
若者はいつの時代も反体制的なもので、現在の動きもベビーブーマー世代のように社会の現実にのみ込まれていくかもしれない。ところが今の日本では、若者の政権支持率が高く、最初から社会にのみ込まれている。
関西電力と原発所在地自治体の間で明らかになったような、隠微な「ずぶずぶ」の癒着構造は日本中に残っている。製造業には適していた終身雇用も、今ではITエンジニアの柔軟な処遇やスタートアップを阻害する。そして長期化した安倍政権は官邸一極支配を強め、内・外政とも警察出身者を重用する点で、ソ連回帰の傾向を強めるロシアとよく似たものになっている。就活以外にも若者がやること、声を上げるべきことは、いっぱいあるだろう。
世界の若者層に見られる脱・国家主義、人間重視、ボランティア精神などの新潮流は、実は日本の若者とも親和性が高い。安倍政権も、せっかくの長期政権の力を憲法改正など国としての守りを固めることばかりに使わず、「トランプ後」も見越した環境・エネルギーや格差是正、途上国・紛争国復興への援助強化などの政策を世界に先駆けて打ち出してほしい。東京五輪はその格好の場となるだろう。
<本誌2019年10月15日号掲載>
※10月15日号(10月8日発売)は、「嫌韓の心理学」特集。日本で「嫌韓(けんかん)」がよりありふれた光景になりつつあるが、なぜ、いつから、どんな人が韓国を嫌いになったのか? 「韓国ヘイト」を叫ぶ人たちの心の中を、社会心理学とメディア空間の両面から解き明かそうと試みました。執筆:荻上チキ・高 史明/石戸 諭/古谷経衡
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