- HOME
- コラム
- 本好きに捧げる ホメない書評
- 「千人計画」だけを敵視する、読売新聞の世界観
「千人計画」だけを敵視する、読売新聞の世界観
日本は既に重要な論文を出せる国ではない
読売新聞が在中研究者たちから最も批判を受けていたのは、その世界観にある。彼らの中では、今でも日本は科学技術大国なのだ。その認識は正しいのだろうか。
文部科学省が発表している「科学技術指標2021」によれば、2017~19年にかけて自然科学系分野で中国の論文数はアメリカを抜いてトップになった。今や科学界の二強は中国とアメリカだ。日本は既に重要な論文を出せる国ではなくなり、ランキングも後退している。
現実は、日本で研究が重要視されず、就職の口もなかった科学者たちが求人もあり、基礎科学研究の環境が充実した中国に渡っている。だとすれば、問題を抱えているのは中国で職を得た科学者ではなく、適切な投資を怠ってきた日本の科学技術政策だろう。
世界観に合ったファクトばかり抽出し、批判すべき対象を見誤ると尽くしたはずの取材は空転する。この本から学べる最大の教訓である。
2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら
この筆者のコラム
「敵をぶった斬る」式極論の深すぎる罪 2022.07.30
ノーベル賞受賞者が言ったから、イベルメクチンを「盲信」していいのか? 2022.06.14
オリバー・ストーンの甘すぎるプーチンインタビューと、その重すぎる代償 2022.05.23
元駐ウクライナ大使、大いに陰謀論を語る 2022.04.12
自画自賛する「コロナの女王」本にサイエンスはあるか? 2022.03.17
「派閥愛」を語りたがる岸田首相にビジョンはあるか 2022.02.15
サッカー日本代表の森保監督に刺さる8年前の「ブーメラン」 2022.01.18