- HOME
- コラム
- 本好きに捧げる ホメない書評
- ワクチン以上に恐れるべきは、根拠なきワクチン危険論
ワクチン以上に恐れるべきは、根拠なきワクチン危険論
「曖昧さに耐える力」が試される一冊
極め付きは「新型コロナのワクチン接種は危ない!」という言葉だ。いつの時代もワクチン忌避論はあったが、「時の権力が推し進めるワクチン接種は製薬会社の圧力」といった左派的な反権威主義とワンセットだった。本書はさすがにそうした類いの主張はないが、帯にここまで強い言葉であおるような論拠は示されていない。せいぜいが「打ったほうが危ない」程度の仮説の提示までだ。
本書はオンライン書店上で圧倒的なコメント数が付いており、話題の書であることは間違いない。それを支えているのは、小川という右派論客の力だろう。
ワクチンへの警戒が不要だとは言わない。他国の状況とともに常にウオッチする必要はある。だが今の時代、ワクチン以上に警戒すべきは、論拠が不足したまま流布される極端なワクチン危険論だ。不安とともに極端な言葉が広がると、本来なら防げた感染症が防げなくなるリスクが高まる。危険論の着火点は、右派でも左派でもあり得る。今後も含め、「曖昧さに耐える力」が試される一冊なのだろうと思うのだった。
2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら
この筆者のコラム
「敵をぶった斬る」式極論の深すぎる罪 2022.07.30
ノーベル賞受賞者が言ったから、イベルメクチンを「盲信」していいのか? 2022.06.14
オリバー・ストーンの甘すぎるプーチンインタビューと、その重すぎる代償 2022.05.23
元駐ウクライナ大使、大いに陰謀論を語る 2022.04.12
自画自賛する「コロナの女王」本にサイエンスはあるか? 2022.03.17
「派閥愛」を語りたがる岸田首相にビジョンはあるか 2022.02.15
サッカー日本代表の森保監督に刺さる8年前の「ブーメラン」 2022.01.18