コラム

「海外からのインプレゾンビは約4千件」能登半島地震から1年、データから見えてきた偽・誤情報対策の課題

2025年01月15日(水)11時19分

以下の画像は楊井人文氏のご厚意によって提供いただいたものである。この回答を見る限り、総務省消防庁にはSNSの偽・誤情報が救助活動業務の妨げになったという記録は存在しない。

newsweekjp_20250115014341.png

公開されている情報を見る限り、他の情報に比べて偽・誤情報が多かったとか、実害を起こしたということはない。報道されているのは閲覧数が多い偽・誤情報があったことや、実害が起きる可能性の指摘なのだ。


多かったのは災害情報と災害関連情報、偽・誤情報の抑止やほんとうの救助要請


次に投稿の内容を見てみたい。下のグラフは筆者が独自に計算した能登半島地震発生後24時間の投稿内容と投稿主体ごとの閲覧数である。ただし、全部を計算対象にすることはできなかったのでリポスト数1万件以上のものに限定した。合計閲覧数は約5億5千回と多い。

抽出した投稿には偽・誤情報は含まれていなかった。すでに削除された可能性もある。すべてではないが、報道で閲覧数が多かったとされた投稿をいくつか検索したが、目立って多いものはヒットしなかった。

ヒットしたのは閲覧数数が多くないものばかりだった。偽・誤情報以外は本人が削除する以外はそのまま残っているので、この検索結果は、偽・誤情報以外にどのような投稿が多く閲覧されたかを知る手がかりになる。

newsweekjp_20250115014436.png

newsweekjp_20250115014626.png

個人(著名人やインフルエンサー)が投稿した災害に関するお役立ち情報などの閲覧が多く、次いで首相官邸やNHK、Yahoo!ニュース、ライブドアニュースなどが多かった。偽・誤情報への注意を呼びかける抑止的な投稿も多かった。お役立ち情報とは、災害用伝言ダイヤルの使い方や災害時のサバイバル方法などといったものである。

NHKやライブドアニュース、Yahoo!ニュースは災害に関するお役立ち情報を発信していたが、こうしたメディアのお役立ち情報の閲覧数よりも個人の発信するものの方が閲覧数が多かった。

救助要請もあったが、偽の救助要請ではなかった。

プロフィール

一田和樹

複数のIT企業の経営にたずさわった後、2011年にカナダの永住権を取得しバンクーバーに移住。同時に小説家としてデビュー。リアルに起こり得るサイバー犯罪をテーマにした小説とネット世論操作に関する著作や評論を多数発表している。『原発サイバートラップ』(集英社)『天才ハッカー安部響子と五分間の相棒』(集英社)『フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器』(角川新書)『ネット世論操作とデジタル影響工作』(共著、原書房)など著作多数。X(旧ツイッター)。明治大学サイバーセキュリティ研究所客員研究員。新領域安全保障研究所。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

焦点:大混乱に陥る米国の漁業、トランプ政権が割当量

ワールド

米加首脳が電話会談、トランプ氏「生産的」 カーニー

ワールド

鉱物協定巡る米の要求に変化、判断は時期尚早=ゼレン

ワールド

国際援助金減少で食糧難5800万人 国連世界食糧計
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジェールからも追放される中国人
  • 3
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中国・河南省で見つかった「異常な」埋葬文化
  • 4
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 5
    なぜANAは、手荷物カウンターの待ち時間を最大50分か…
  • 6
    不屈のウクライナ、失ったクルスクの代わりにベルゴ…
  • 7
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 8
    アルコール依存症を克服して「人生がカラフルなこと…
  • 9
    最悪失明...目の健康を脅かす「2型糖尿病」が若い世…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えない「よい炭水化物」とは?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 6
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 7
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 8
    大谷登場でざわつく報道陣...山本由伸の会見で大谷翔…
  • 9
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story