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民主主義の衰退が生むグレーゾーンビジネス
イスラエルのサイバー企業 NSO グループのオフィス外が抗議する人々 REUTERS/Nir Elias
<非国家アクターが行っているグレーゾーンビジネスはすでに我々の社会を広く侵食している......>
非国家アクターというグレーゾーンビジネス
SNSプラットフォームに関する話題は毎日必ずどこかでニュースになっているし、ランサムウェアグループも毎日のように世界中で被害者を生んでいる。ウクライナ関連のニュースではロシアの民兵組織ワグネルグループの名前を見ることも多い。イスラエルの企業NSOグループは世界各国に国民を監視するためのスパイウェアを販売しており、イスラエル政府はスパイウェアの提供を外交手段に使い始めた。
日常的に特に違和感なく、こうしたニュースが流れているが、よく考えると20年前には考えられなかったことだ。社会や政治、外交、戦争に影響を及ぼす主体が民間の組織に取って代わられつつある。アメリカの軍需産業や傭兵組織、古くは東インド会社など類似のものは存在していたが、今日ほど広くあらゆる分野に広がってはいなかった。
こうした企業あるいはグループのほとんどは違法、合法を問わず民主主義の価値感とは相容れない活動を行っている。これらの企業を一言で表現する適切な言葉はないが、非国家アクターと呼ぶことにする。非国家アクターは文字通り、国家ではないものの社会や政治、外交、戦争に影響を及ぼす存在という意味だ。
非国家アクターは多かれ少なかれ所属する国家の政府と接点があり、時には政府のプロキシとして活動することもある。あくまでも民間企業だから政府は関係を否定することもできるし(deniability)、見捨てることもできる便利な存在である。このdeniabilityのおかげでロシアのランサムウェアグループが世界各地で被害を与えてもすぐにロシア政府が非難されるわけではないし(「ランサムウェアに注意」とは言うが「ロシアからの攻撃に注意」とはめったに言わない)、NSOグループが世界各国のメディアから非難を受けても、それを理由にイスラエルに対して世界各国が政治や外交上で制裁を与えるわけではない。
企業にとっては政府と接点があることで優遇されたり、資金を援助されたり、違法行為の許容などのメリットを与えてもらえる。その一方で政府機関ではないので、政府の命令を遵守する必要はなく、独自の判断で独自のビジネスを行うことができる。もちろん切り捨てられて、突然逮捕されたり、殲滅させられるリスクもある。
双方にとってメリットのある関係だ。ただし、この関係が成立するのは民主主義以外の国においてのみである。民主主義の国では政府と企業のこうした関係は原則として認められていない。簡単に表にまとめたものが下表になる。
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