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年内の台湾有事の可能性とは?──中国は必ず併合に動く、問題は日本に備えがないこと
台湾併合に向けての中国の準備
香港に関する記事でご紹介したように中国は閾値以下の攻撃で相手を追い込んでゆく。香港を例によると、まず経済界への影響力を強め、次に経済界から従業員や取引先などに広めていった。中国は台湾の輸出の42%を占めており(アメリカ向けは15%にすぎない)、近年では台湾企業が本土に投資を行う話が出たことがある。
並行してデジタル影響工作による世論誘導や、サイバー攻撃による情報収集、本格的なサイバー攻撃の準備などを行う。さらに今回は軍事面でのレッドラインを押し上げてきた。ペロシ訪台後に中国が行った軍事演習は、以前よりも台湾に近い場所で行われた。本格的なサイバー攻撃の準備としては中国由来のAPTが何度も台湾を攻撃している。軍事とサイバー面ではレッドラインの押し上げに成功している。経済面と世論誘導には、まだ時間がかかりそうだ。
アメリカとEUは、ウクライナへの支援も行わなければならないため、いまが台湾へ攻め込む好機という主張もよく見る。筆者は軍事の専門家ではないが、ウクライナ侵攻以降、中国が行ってきたレッドラインの押し上げにアメリカとEUは明確に非難していない。少なくとも中国がレッドラインを元に戻すほどの反応はしていない。そしてEUはもともと台湾よりも中国を気に掛けている。
アメリカはロシアのウクライナ侵攻に際して、ロシアに軍事協力した場合にアメリカはアメリカとヨーロッパの市場を失うことになる、と要請したこともあって、中国のレッドライン押し上げに強く出られなかった。ペロシの訪台を止められなかったという負い目もある。
アメリカは内戦を予測した書籍がベストセラーになるほど国内が不安定な状況に陥っており(なぜか日本ではほとんど報道されない)、中間選挙の結果によってさらに拍車がかかる可能性もある。また、アメリカは「ひとつの中国」という原則を持ちながら、台湾関係法で台湾の支援に関与しており、台湾の位置づけについて政府内でも共有できているとは言えない。
EUのいくつかの国およびイギリスも不安定さを増している。しばらくは放っておいてもアメリカとEUが台湾のために割ける力は減ってゆく。また、ウクライナとシリアへの対応の違いが明確に示すように、そもそも地球の裏側の台湾を助けることに世論の支持が得られない可能性が高い。
特にEUにとってウクライナは同胞だが、シリアやエチオピアが同胞でないように台湾も同胞ではない。それは日本も同じで、ウクライナへの対応と、ミャンマーへの対応の違いが如実にそれを物語っている。グローバルノースの同胞という意識があるせいかもしれないが、日本では近隣のアジア諸国よりもヨーロッパ諸国を大事にする傾向がある。
中国にとって軍事侵攻を行うのはひとつの選択肢だが、軍事侵攻が容易になっていることを背景にまだ充分進んでいない経済界の侵食と世論誘導を進めた方が得策だろう。計画的な軍事侵攻の場合、それに先だって本格的なサイバー攻撃およびその準備が行われることが多い。サイバー攻撃を閾値以下に留めていることは、直近に計画的な軍事侵攻の意図はなさそうに見える。もちろん、偶発的あるいは他の要因による可能性は否定できないので備えは必要だ。
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