- HOME
- コラム
- 国際政治の読み解き方
- イギリスは第2のオーストリアになるのか
イギリスは第2のオーストリアになるのか
また、デヴィッド・キャメロンは、2006年に保守党党首選挙に出馬した際に、閣僚経験がなく、また30代という若い年齢で政治経験が浅かったために、党内主流派で8割近くを占めていた欧州懐疑派に迎合して、彼らが求める政策に同調して党首の座を射止めました。さらには、2014年の欧州議会選挙で最大の議席をとって第一党となったUKIPに脅威を感じて、キャメロンは2015年の総選挙ではEU離脱を問う国民投票を行うことを公約に掲げて、総選挙に勝利して単独政権を実現しています。
【参考記事】EU離脱派勝利が示す国民投票の怖さとキャメロンの罪
これらの三人の政治指導者の、短絡的で政局的な合理的判断が、三人共が意図せぬかたちで大国イギリスを解体させようとして、EUを傷つけようとしています。
いったい、政治における合理的な判断とは何なのでしょうか。優れた資質を持ち、イートン校とオクスフォード大学という最高の学歴を持つキャメロンとジョンソンという二人の理性的な指導者が、なぜこれほどまで愚かな政治行動を取ってしまったのでしょうか。
第一次世界大戦のときに、強硬な政策を選択したオーストリア政府の指導者達は、1918年にハプスブルク帝国が解体したときに、「まさかこのような帰結になるとは想像もしていなかった」と思ったことでしょう。同じように、これから連合王国が解体したときに、キャメロンもジョンソンも、自らの誤った判断が、「まさかこのような帰結になるとは想像もしていなかった」と思うのかもしれません。
※当記事はブログ「細谷雄一の研究室から」からの転載です。
<ニューストピックス:歴史を変えるブレグジット国民投票>
この筆者のコラム
保守党敗北 よりいっそう不透明化するイギリス政治 2017.06.12
北朝鮮に対する軍事攻撃ははじまるのか 2017.04.15
「最も巨大な国益の損失」を選択したイギリス 2017.04.03
ドナルド・トランプとアメリカ政治の隘路 2016.11.10
東アジアにおける戦略関係の転換期 2016.09.15
イギリスは第2のオーストリアになるのか 2016.06.27
安保法施行で日本は「専守防衛を転換」したのか 2016.03.29