米VOAも大統領令でリストラ、権威主義下の国民向け情報発信が機能不全に

世界の約50言語で権威主義体制下の国民などに向け放送する米国政府系メディア「ボイス・オブ・アメリカ(VOA)」で15日、記者やプロデューサー、アシスタントなど職員計1300人超のうち、ほぼ全員が休職扱いとなり、報道機能がまひ状態に陥った。ワシントンで2022年6月撮影(2025年 ロイター/Sarah Silbiger)
3月15日(ロイター - 世界の約50言語で権威主義体制下の国民などに向け放送する米国政府系メディア「ボイス・オブ・アメリカ(VOA)」で15日、記者やプロデューサー、アシスタントなど職員計1300人超のうち、ほぼ全員が休職扱いとなり、報道機能がまひ状態に陥った。
またロシアやウクライナなど東欧向け「ラジオ自由欧州・ラジオ自由」や、中国や北朝鮮に照準を合わせた「ラジオ自由アジア」も、財政資金が打ち切られた。
こうした措置はトランプ米大統領が14日、VOAを所管する政府出資の国際放送機関「米国グローバルメディア局(USAGM)」などについて大幅リストラを求める大統領命令に署名したためだ。
VOAは1942年、ナチスドイツの宣伝工作に対抗するため発足した。現在の利用者数は各週で計3億6000万人に及ぶ。最新の議会報告によると、USAGM職員は約3500人で、2024年の予算は8億8600万ドルだった。
VOA公式サイトでは、ロシア政府に「好ましくない組織」と指定されたと記載。このためロシア国内に住む人やロシア占領下のウクライナ人に対し、VOAコンテンツに「いいね」をしたり、共有したりすると「罰金や収監の恐れがある」と注意喚起している。
東欧チェコのヤン・リパフスキー外相はXに投稿し、「ベラルーシからロシア、イラン、アフガニスタンまで、自由のない環境で暮らす人たちにとって、ラジオ自由とVOAが数少ない自由な情報源の1つだ」と述べた。
Xを所有し、「政府効率化省」(DOGE)で公務員大量解雇の陣頭指揮も執るイーロン・マスク氏もXに投稿。「この世界的な政府宣伝機関(USAGM)を段階的に縮小する間は組織名が一時的に『どこでも宣伝省』(DOPE、the Department of Propaganda Everywhere)に変更された」と書き込んだ。
14日署名の大統領のリストラ命令では、USAGMのほか連邦調停局(FMCS)やウイルソン・センター、博物館・図書館サービス(IMLS)、省庁間のホームレス問題連絡協議会など計6つの連邦政府組織が対象に挙がり、「法律で義務付けられた最小限の存在と機能」に限定するよう求められた。