中国全人代開幕、成長目標5%前後 景気支援へ特別国債増発

3月5日、中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が開幕した。今年の経済成長率目標は5%前後と、前年と同じ伸び率に設定。「この100年類を見ない」(李強首相、写真手前)の国際情勢の激変、米国による追加関税の影響を緩和するため、財政出動を昨年よりも拡大する。写真は北京で撮影(2025 ロイター/Florence Lo)
Antoni Slodkowski Laurie Chen Jing Xu Eduardo Baptista
[北京 5日 ロイター] - 中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が5日開幕した。今年の経済成長率目標は5%前後と、前年と同じ伸び率に設定。「この100年類を見ない」(李強首相)国際情勢の激変、米国による追加関税の影響を緩和するため、財政出動を昨年よりも拡大する。
李首相は政府活動報告の演説で「世界中で、この100年、類を見ない変化がより速いペースで起きている」とし「複雑かつ厳しさを増す外部環境は、貿易、科学、技術などの分野で中国により大きな影響を及ぼす可能性がある」と述べた。
一部のアナリストは李首相の演説について、消費支援が以前よりも目立ち、先進的な製造業や技術発展への投資を意味する「新たな質の生産力」の強調が薄れていると指摘した。
ガベカル・ドラゴノミクスのテクノロジーアナリスト、ティリー・チャン氏は「2025年の主要課題の中で消費拡大が初めて最優先事項に引き上げられ、テクノロジーが通常の首位から外れた」と指摘。これまでの産業政策からの転換ではないが、よりバランスのとれたマクロ経済の枠組みを追求するものだと述べた。
李首相は演説で「特に消費が低迷している」と認め、「雇用創出と所得の伸びに対する圧力」を指摘し、家計需要を「強力に押し上げる」と約束した。
<財政赤字拡大、特別国債増発>
今年の財政赤字目標は国内総生産(GDP)比4%とし、昨年の3%から引き上げた。消費を刺激するための「特別行動計画」も約束した。
今年の超長期特別国債発行は1兆3000億元(1790億ドル)とし、昨年の1兆元から増額。うち3000億元は、最近拡充した電気自動車(EV)や家電製品などの消費者補助金制度に充てる。
地方政府の特別債発行枠は4兆4000億元(1790億ドル)とし、昨年の3兆9000億元から拡大させた。
これとは別に、主要国有銀行への資本注入に向け、特別債を5000億元発行する。
マッコーリーの中国担当チーフエコノミスト、ラリー・フー氏は「これらの政策目標は、当局が関税を相殺するために景気刺激策を用いることを示唆している」と指摘。ただ「貿易戦争の実際の影響を確認するにはさらに時間が必要なため、3月は大規模な刺激策を実施するには時期尚早だ」とし、「現時点では手の内を明かさないだろう」と述べた。
<消費を支援>
中国の家計支出が年間GDPに占める割合は40%未満で、世界平均を約20ポイント下回る。一方、投資は20ポイント上回る。
李首相は、供給と需要の差に対処し、地方政府の歳入を改善する財政改革を実施し、消費が刺激されるようにすると表明した。ただ具体的な予定は示さなかった。
福祉給付の増額はわずかになるもようだ。李首相は最低年金を20元増額して143元とし、医療保険補助金を1人当たり30元増額するほか、基本的な医療サービスに対する補助金を5元増額することなどを示唆した。
深刻化する人口危機に配慮し、育児補助金の支給や高齢者介護の発展も表明したが、詳細は明らかにしなかった。
<国防費膨張続く>
今年の国防費は7.2%増と想定。伸び率は昨年と同じで引き続き経済成長率目標(5%前後)を上回った。
習近平氏が国家主席兼軍最高司令官に就任した13年の国防予算は7200億元だったが、10年余りを経て今年は1兆7800億元(2456億5000万ドル)に拡大する。
地政学的な課題が山積する中、習氏は35年までに軍近代化の完了を目指している。
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