インタビュー:物言う株主対策、コンサル事業に手ごたえ 人員3割増へ=みずほ信託社長

4月21日、みずほ信託銀行の笹田賢一社長(写真)はロイターとのインタビューで、アクティビスト(物言う株主)への対応を巡り、企業を支援する株式戦略コンサルティング事業を一段と強化していく方針を示した。写真は11日、都内で撮影(2025年 ロイター/Miho Uranaka)
Miho Uranaka
[東京 21日 ロイター] - みずほ信託銀行の笹田賢一社長はロイターとのインタビューで、アクティビスト(物言う株主)への対応を巡り、企業を支援する株式戦略コンサルティング事業を一段と強化していく方針を示した。日本企業へのアクティビストの投資増加を背景にニーズが急速に高まっているといい、同分野の人員を約3割増強する計画も明らかにした。
笹田氏は昨年4月の社長就任時から、株主戦略を重点領域の一つとして掲げ、企業の価値向上に取り組んできた。これまでの実績を振り返り「非常に手ごたえを感じている」と語る。
2025年3月期には、IR(投資家に対する広報活動)・SR(株主に対する広報活動)に関する助言手数料が前年度比67%増加した。また、株式戦略コンサルティングを起点として広がった収益は、社内計画対比で2.5倍に達した。
笹田氏は、「もっと人手があれば、もっとできた。とにかく(案件が)多すぎるという状況」と話し、ボトルネックとなっている人員不足を解消するため、現在30人規模の人員を今年度中に約3割増やす、との見通しを示した。
株主名簿を管理する証券代行機関である信託銀行は、株主動向を的確に把握できる強みを生かし、IR・SRの支援を通じたコンサルティング・サービスに注力している。笹田氏は、「財務面、事業面、ガバナンス面に加えて人的資本」など、あらゆる面で分析・提案し、企業と議論するという。
信託銀行が得意とする不動産分野とグループ内の連携も深めている。資本効率や企業価値の向上を求められる企業に対し、資産の見直し時期にタイムリーに助言することで、「必要な解決策として不動産(の売却)につながるケースがものすごく増えている」と指摘する。海外ファンドが日本の不動産市場に相次いで参入していることも、不動産売却の受け皿の拡大として追い風になっているという。
同行は4月、法人・個人経営者で分かれていた部門を統合し、両者を横断的に支援する新たなコンサルティング部門を設置した。社員約2000人が同部門に所属し、株式戦略コンサルも傘下に置く。笹田氏は、「法人・個人の垣根を取り払い、シームレスな戦略の推進や人材育成を加速させる」と、部門再編の狙いを説明した。
今後、企業と顧客の接点を強固にするための手段として、電子化した有価証券を用いた資金調達のSTO(セキュリティ・トークン・オファリング)の活用も視野に入れているという。
※インタビューは11日に実施しました。
(浦中美穂、Anton Bridge)