アングル:今週のFOMC、トランプ氏政策で一変した米経済巡る認識と対応に注目

3月14日、米連邦準備理事会(FRB)は18-19日に開く次回連邦公開市場委員会(FOMC)で、1月末の前回会合以来、トランプ大統領の政策によって経済環境がいかに変わったかを理解しようと努めるだろう。写真は2013年7月、ワシントンのFRBで撮影(2025年 ロイター/Jonathan Ernst)
[ワシントン 14日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は18-19日に開く次回連邦公開市場委員会(FOMC)で、1月末の前回会合以来、トランプ大統領の政策によって経済環境がいかに変わったかを理解しようと努めるだろう。
パウエルFRB議長は、トランプ政権の決定事項を「批判ないし評価するのはわれわれの仕事ではない」とくぎを刺しているが、そうした決定事項が経済に及ぼす影響にFRBとして対応しなければならない。1月時点ではまだ思惑の域を出なかったさまざまなリスクは今、現実化の可能性が高まってきているのは間違いない。
最近ロイターがエコノミストを対象に行った調査では、米経済が近く景気後退に陥るリスクは高まったとの見方でほぼ一致し、一部は物価上昇がなお続く中で成長が減速してしまうかもしれないと予想した。
物価高と景気減速が同時に進めば、FRBは利下げで経済と雇用を支えるか、それとも高金利を維持して物価と予想物価を確実に抑え込むか、難しい判断を迫られかねない。
<2つの使命達成で矛盾も>
FRBは次回FOMCで政策金利の据え置きを決めることが予想される。ただ、19人のFOMCメンバーが示す最新の経済物価見通しからは、トランプ政権始動からの動きを失業率や物価上昇率、経済成長率の面でFRBがどう受け止めているか、政策対応をどのように進めるべきと考えているかが分かるだろう。昨年12月時点でFOMCメンバーが想定していた2025年の利下げ幅は計50ベーシスポイント(bp)だったが、投資家は足元で計75bpの利下げを見込んでいる。
SGHマクロ・アドバイザーズのチーフエコノミスト、ティム・デューイ氏は、パウエル氏によるFOMC前最後の発言で、物価水準がしつこく高止まっているが、物価上昇率は予想より急速に下振れ、労働市場は予想外に弱まっていると認識していることが示唆されたと説明。このシナリオの下なら、FRBは想定よりも長い期間にわたって現在の高い金利水準を維持するか、さらなる利下げを承認するかどちらかの展開になると述べた。
「パウエル氏は物価上昇と雇用軟化が組み合わさる事態が起きることに関するヒントは示していない。もちろんこの状況こそが現在最も関心を集めている政策運営を巡る疑問点だ」という。
一方、トランプ氏の関税政策が幅広い分野での価格高騰につながり、予想物価を押し上げるのではないかとの懸念が広がる中で、FRBのさまざまな政策担当者の発言にも2%の物価上昇率と雇用最大化という2つの使命達成に矛盾が生じる可能性の影が忍び寄っている。
トランプ氏は相次いで輸入関税を導入する一方、連邦政府職員の大量解雇や政府契約の打ち切りなど成長の足を引っ張る恐れがある措置を講じてきた。このため、FRBもトランプ氏の政策に基づいて金融政策の重点を物価抑制と成長・雇用支援のどちらに置くべきか判断がつきにくい立場にある。
政権幹部からは、経済の一時的な痛みは甘受すべきだとの声も出ている。ベッセント財務長官は、政府支出に依存しない形に経済を移行させる取り組みを「デトックス(解毒)」の期間と呼び、ラトニック商務長官は、たとえ景気後退になってもトランプ氏の政策を実行できるなら「それだけの価値」があるだろうと述べた。
<警戒信号>
そうしたトランプ政権の姿勢は、市場と人々の心理に大きな打撃を与えている。
S&P総合500種は2月に付けた過去最高値から10%超も下落し、トランプ氏が大統領選に勝利して企業の間に米経済に対する楽観ムードが広がった時期の水準をはるかに下回っている。
米国債市場では短期債利回り水準が長期債より高くなっており、これは目先の経済に対する自信が失われたシグナルと受け止められるケースもある。
以前にFRBが公表した調査論文では、10年国債と3カ月国債の利回り差はイールドカーブを注視する上で最も有効なスプレッドだと見なされていた。
また、各種サーベイでは中小企業の景況感悪化が示されている。ソフトウエア企業インテュイットによると、1月に零細企業が人員を削減したことが分かる。
米労働省が発表した2月の非農業部門雇用者は前月比15万1000人増加し、失業率も4.1%と相対的に低いままだが、これは政府職員や政府と契約を切られた企業の解雇は反映されていない。
ゴールドマン・サックスのエコノミスト、ジャン・ハチウス氏は最近、2025年の米経済成長率御代押しを2.4%から1.7%に引き下げた。理由として米国の通商政策に起因する経済の逆風が著しく強まっている点を挙げ、トランプ政権としても関税によって短期的に経済の勢いが弱まることを織り込ませる取り組みをしているように見えると指摘した。
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