アングル:個人投資家、米株急落でも安値拾いに慎重 景気後退を懸念

3月11日、ストラテジストや資産運用アドバイザーによると、米国の個人投資家は株式市場の急落に不安を募らせており、安値で買いを入れるべきか、あるいはより安全な投資先へ資金を移すべきかなどについて、アドバイスを求めている。ニューヨーク証券取引所で2024年11月撮影(2025年 ロイター/Andrew Kelly)
Suzanne McGee
[11日 ロイター] - ストラテジストや資産運用アドバイザーによると、米国の個人投資家は株式市場の急落に不安を募らせており、安値で買いを入れるべきか、あるいはより安全な投資先へ資金を移すべきかなどについて、アドバイスを求めている。
トランプ大統領の関税政策がリセッション(景気後退)を引き起こすとの懸念から幅広い銘柄に売りが出て、S&P500種指数の時価総額は先月のピークから4兆ドル減少した。かつてトランプ氏の政策で活況を呈した市場にとって劇的な転換となった。
チャールズ・シュワブのヘッドトレーディング・デリバティブ・ストラテジスト、ジョー・マッツォラ氏は「従来見られたような安値拾いの買いは減少しており、投資家が慎重になっている兆候が見られる」と指摘する。
2月中旬ごろから個人顧客の間でリスク回避の動きが徐々に広がり始め、ポートフォリオの規模が大きい顧客は売り越しに転じたという。
富裕層向け金融サービスを手掛けるジャクソン・スクエア・キャピタルのマネジングパートナー、アンドリュー・グラハム氏は、顧客口座のキャッシュ水準を積み増しており約5年ぶりの高水準になっていると指摘。
その上で引き続き株式を売却してキャッシュを積み増していると説明し、キャッシュの保有割合は現在、顧客ポートフォリオの大部分で「10%を優に超える」水準に達していると語った。
憂慮する顧客は定期的な資産運用説明に参加するようになったものの、現在の下落局面を長期的な景気後退の兆候ではなく、一時的な調整と捉えている顧客が多いことが懸念されると述べた。
米投資信託協会(ICI)のデータによれば、マネー・マーケット・ファンド(MMF)に預けられている資産は過去最高でキャッシュは全般的に高水準だ。クレーン・データのピーター・クレーン氏によると、キャッシュは年初の約7.17兆ドルから増加し、先週には過去最高の7.3兆ドルに達した。
ただ、全ての投資家が悲観的なわけではない。バンダ・リサーチによると、先週時点でパランティアなど市場で注目されている個別銘柄は買い越しが続いている。バンダのシニア・バイス・プレジデント、マルコ・イアキーニ氏は、レバレッジ型上場投資信託(ETF)も人気があると語った。
<銘柄入れ替えか撤退か>
資産運用アドバイザーらは、S&P500指数で大きな比重を占め、市場で過大評価されている銘柄を避けることを推奨している。その一方で、10日の取引で全ての銘柄が急落したわけではないことに安堵(あんど)する声も聞かれる。
チャールズ・シュワブのマッツォラ氏は、投資家がハイテク株や金融株を売却する一方で、エネルギーや公益事業株には新たな資金が流入していると指摘し、「ローテーションが進行しているようだ」と語った。また、値上がり銘柄と値下がり銘柄の騰落比率にも安心感を覚えているという。
ワールド・ファイナンシャル・アドバイザーズのネート・ギャリソン最高投資責任者(CIO)は、今年初めから顧客資産をバリュー株に再配分していると語った。
バリュー株は株価の急上昇は望めなくても、安定した成長が期待できる低リスク銘柄で、エヌビディアのようなテクノロジー株に比べて株価が低い傾向がある。
ギャリソン氏は新興国市場と外国株のポジションも増やしたと明らかにした。「成長株は打撃を受けているが、バリュー株は依然として上昇している」と指摘。ただ安値で買うことを顧客に勧めていないという。「これで泡(フロス)は解消される。大幅な資産配分の決定は慎重に行うよう呼びかけている。現在の市場には現実的なリスクがある」と述べた。