M&A市場は当面低調か、米政権は予測不能 年後半の回復期待も

企業の合併・買収(M&A)を手がける欧米やインドの専門弁護士、銀行、議決権行使助言会社などの1000人以上が集まる第37回テュレーン企業法研究会年次総会が6日、米南部ルイジアナ州ニューオーリンズで2日間の日程で始まった。写真は2023年、第35回の年次総会で撮影。(2025年 ロイター/Kathleen Flynn/File Photo)
Abigail Summerville
[ニューオーリンズ 6日 ロイター] - 企業の合併・買収(M&A)を手がける欧米やインドの専門弁護士、銀行、議決権行使助言会社などの1000人以上が集まる第37回テュレーン企業法研究会年次総会が6日、米南部ルイジアナ州ニューオーリンズで2日間の日程で始まった。当面はM&Aは様子見姿勢から低調が懸念される一方、年後半には持ち直すとの期待も聞かれた。
ただ、今後数週間から数カ月の間は、第2次トランプ米政権の政策が予測不可能で市場環境が不安定な上、地政学的リスクも残っており、M&Aの冷え込みにつながりそうだ。
また、日本製鉄のUSスチール買収計画にトランプ大統領が介入したことから、米国以外の国のM&A案件でも政府が介入して契約締結までかなりの時間がかかりかねないと懸念する声も聞かれた。
米国でのM&A動向について調査会社ディーロジックが集計したデータによると、年初以来2カ月間は計1172件、総額2268億ドルにとどまり、過去20年以上の間で最も低調だった。前年同期と比べると件数、金額とも約3分の1減少した。
これは事業や企業、または株式の一部を売却する可能性がある企業や個人が神経質になっているためだ。しかも、米ウォール街で投資家の不安心理を示す「恐怖指数」として知られるVIX指数(ボラティリティー・インデックス)が6日、24.41に急騰しただけに、M&Aを手控えたいとの心理が強まった。
米投資銀行フーリハン・ローキーの幹部は「今年は前途多難なスタートとなった」と話した。数カ月前は今年のM&A総額見通しがコンセンサスで前年比5000億ドル増の3兆5000億ドルだったが、今では見込み薄という。ただ、ハイテクやエネルギー、金融などの特定の分野では依然として前年を上回る可能性があると指摘した。
総会の登壇者の中には、S&P500種株価指数が前年末比でマイナス圏に落ち込んでいる今の状況はM&Aが急減しているというよりも一時的な停滞に近いと思われると語る人もいた。
M&A弁護士らは依然、合併に向けた準備作業に追われていると話した。企業は成長に寄与しない事業分野の売却に関心が高く、資金も十分に確保しているという。
プライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)や物言う株主(アクティビスト)の要求もM&A市場を活性化させる重要な要素と期待されている。そうした市場参加者は企業に変革を求めて圧力をかけるためだ。