ニュース速報
ビジネス

「人財尊重社会」へ、賃上げ起点に所得・生産性向上 石破首相が施政方針演説

2025年01月24日(金)14時53分

 1月24日、石破茂首相は衆議院本会議での施政方針演説で、中長期的に生産年齢人口が減少していく日本は人を財産として尊重する「人財尊重社会」を築いていく必要があると強調し、賃上げを起点に国民の所得と経済全体の生産性向上を図っていくと述べた。昨年11月撮影(2025年 ロイター/Issei Kato)

Kentaro Sugiyama

[東京 24日 ロイター] - 石破茂首相は24日、衆議院本会議での施政方針演説で、中長期的に生産年齢人口が減少していく日本は人を財産として尊重する「人財尊重社会」を築いていく必要があると強調し、賃上げを起点に国民の所得と経済全体の生産性向上を図っていくと述べた。日米首脳会談では、トランプ大統領との間で諸課題に対する認識を共有するとともに、日米同盟をさらなる高みに引き上げたいと語った。

<「楽しい日本」へ地方創生>

首相は冒頭、今年は戦後80年、昭和の元号で100年に当たる節目の年であり「これからの日本を考える年にしていく」と語った。今後20年で生産年齢人口が2割以上減少する現実を直視し、持続可能な経済社会システムへ転換していくことが求められていると述べた。国民一人一人が輝く「楽しい日本」を目指し、「地方創生2.0」を「令和の日本列島改造」として強力に進めると宣言した。

「令和の日本列島改造」は、1)若者や女性にも選ばれる地方、2)産官学の地方移転と創生、3)地方イノベーション創生構想、4)新時代のインフラ整備、5)広域リージョン連携──の5本柱で具体化していくという。「人財尊重社会」における経済政策にとって最重視すべきは賃上げ、との認識のもと、労使交渉による大幅な賃上げを促すとともに、「最低賃金を着実に引き上げ、2020年代に全国平均1500円という高い目標に向かってたゆまぬ努力を続ける」と改めて述べた。

経済政策については「『経済あっての財政』の考え方の下、成長率の引き上げに重点を置いた政策運営を行うとともに、歳出・歳入両面の改革を継続し、引き続き財政健全化を目指す」と語った。今年の骨太方針で早期のプライマリーバランス黒字化実現を含め、今後の財政健全化に向けた取り組みを示すとした。

<トランプ米大統領との会談に意欲>

首相は、日米同盟が日本の外交・安全保障の基軸だと説明。地域のパワーバランスが大きく変化する中で力の空白が地域の不安定化につながることのないよう、日米の協力をさらに深化させ、米国の地域へのコミットメントを引き続き確保しなければならないと語った。

そのうえで「きたるべき日米首脳会談においては、トランプ大統領との間で、安全保障や経済の諸課題につき、認識の共有を図り、一層の協力を確認し、日米同盟をさらなる高みに引き上げたい」と述べた。

中国との関係では、懸案事項や意見の相違について、主張するべきことは主張し、協力できる分野では協力していく、現実的な外交を行っていくと語った。

<国会運営、真摯に議論>

自民・公明両党は昨年10月の衆院選で少数与党に転じたものの、引き続き両党は国民に対して責任を持つ責任与党でなければならないと強調。さらに「党派を超えた合意形成を図るため、臨時国会に続き、与党、野党ともに、責任ある立場で熟議し、国民の納得と共感を得られるよう努めることが必要だ」と述べた。

25年度予算や税制改正、社会保障や教育など各分野の施策について多くの賛同が得られるよう説明を尽くすとともに、各党の主張も聞きながら議論を重ねると述べた。中長期的な政策の方向性や制度の持続可能性についても、給付や負担のあり方を含め、真摯に議論していくとした。

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

在日米軍駐留費の負担増、日本に要請の必要=グラス駐

ビジネス

金現物が最高値更新、トランプ関税巡る懸念や米利下げ

ワールド

プーチン氏、停戦巡る米提案に同意 「根源要因」排除

ワールド

米民主党主導州、トランプ政権の教育省廃止の停止求め
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
2025年3月18日号(3/11発売)

3Dマッピング、レーダー探査......新しい技術が人類の深部を見せてくれる時代が来た

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 2
    【クイズ】世界で1番「石油」の消費量が多い国はどこ?
  • 3
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は中国、2位はメキシコ、意外な3位は?
  • 4
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「…
  • 5
    SF映画みたいだけど「大迷惑」...スペースXの宇宙船…
  • 6
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 7
    「若者は使えない」「社会人はムリ」...アメリカでZ…
  • 8
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 9
    「トランプの資産も安全ではない」トランプが所有す…
  • 10
    『シンシン/SING SING』ニューズウィーク日本版独占…
  • 1
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 2
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 3
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は中国、2位はメキシコ、意外な3位は?
  • 4
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 5
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 6
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「…
  • 7
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMA…
  • 8
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 9
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 10
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 9
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 10
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中