「人財尊重社会」へ、賃上げ起点に所得・生産性向上 石破首相が施政方針演説
1月24日、石破茂首相は衆議院本会議での施政方針演説で、中長期的に生産年齢人口が減少していく日本は人を財産として尊重する「人財尊重社会」を築いていく必要があると強調し、賃上げを起点に国民の所得と経済全体の生産性向上を図っていくと述べた。昨年11月撮影(2025年 ロイター/Issei Kato)
Kentaro Sugiyama
[東京 24日 ロイター] - 石破茂首相は24日、衆議院本会議での施政方針演説で、中長期的に生産年齢人口が減少していく日本は人を財産として尊重する「人財尊重社会」を築いていく必要があると強調し、賃上げを起点に国民の所得と経済全体の生産性向上を図っていくと述べた。日米首脳会談では、トランプ大統領との間で諸課題に対する認識を共有するとともに、日米同盟をさらなる高みに引き上げたいと語った。
<「楽しい日本」へ地方創生>
首相は冒頭、今年は戦後80年、昭和の元号で100年に当たる節目の年であり「これからの日本を考える年にしていく」と語った。今後20年で生産年齢人口が2割以上減少する現実を直視し、持続可能な経済社会システムへ転換していくことが求められていると述べた。国民一人一人が輝く「楽しい日本」を目指し、「地方創生2.0」を「令和の日本列島改造」として強力に進めると宣言した。
「令和の日本列島改造」は、1)若者や女性にも選ばれる地方、2)産官学の地方移転と創生、3)地方イノベーション創生構想、4)新時代のインフラ整備、5)広域リージョン連携──の5本柱で具体化していくという。「人財尊重社会」における経済政策にとって最重視すべきは賃上げ、との認識のもと、労使交渉による大幅な賃上げを促すとともに、「最低賃金を着実に引き上げ、2020年代に全国平均1500円という高い目標に向かってたゆまぬ努力を続ける」と改めて述べた。
経済政策については「『経済あっての財政』の考え方の下、成長率の引き上げに重点を置いた政策運営を行うとともに、歳出・歳入両面の改革を継続し、引き続き財政健全化を目指す」と語った。今年の骨太方針で早期のプライマリーバランス黒字化実現を含め、今後の財政健全化に向けた取り組みを示すとした。
<トランプ米大統領との会談に意欲>
首相は、日米同盟が日本の外交・安全保障の基軸だと説明。地域のパワーバランスが大きく変化する中で力の空白が地域の不安定化につながることのないよう、日米の協力をさらに深化させ、米国の地域へのコミットメントを引き続き確保しなければならないと語った。
そのうえで「きたるべき日米首脳会談においては、トランプ大統領との間で、安全保障や経済の諸課題につき、認識の共有を図り、一層の協力を確認し、日米同盟をさらなる高みに引き上げたい」と述べた。
中国との関係では、懸案事項や意見の相違について、主張するべきことは主張し、協力できる分野では協力していく、現実的な外交を行っていくと語った。
<国会運営、真摯に議論>
自民・公明両党は昨年10月の衆院選で少数与党に転じたものの、引き続き両党は国民に対して責任を持つ責任与党でなければならないと強調。さらに「党派を超えた合意形成を図るため、臨時国会に続き、与党、野党ともに、責任ある立場で熟議し、国民の納得と共感を得られるよう努めることが必要だ」と述べた。
25年度予算や税制改正、社会保障や教育など各分野の施策について多くの賛同が得られるよう説明を尽くすとともに、各党の主張も聞きながら議論を重ねると述べた。中長期的な政策の方向性や制度の持続可能性についても、給付や負担のあり方を含め、真摯に議論していくとした。