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アングル:欧州高級ブランド、中国消費低迷で年後半も収益回復見込めず

2024年07月21日(日)08時05分

中国の中間層による高級ブランド品への支出低迷が長引いており、アナリストや企業幹部によると年内に持ち直す可能性は低い。写真は北京で2021年1月撮影(2024年 ロイター/Tingshu Wang)

Mimosa Spencer

[パリ 17日 ロイター] - 中国の中間層による高級ブランド品への支出低迷が長引いており、アナリストや企業幹部によると年内に持ち直す可能性は低い。このため欧州ブランド企業の株価は大幅下落し、時価総額はここ数カ月で計2000億ドルほども吹き飛んだ。

今週はファッションブランドの英バーバリーと独ヒューゴ・ボスが業績悪化見通しを示し、スイス高級時計のリシュモンは中国、マカオ、香港での四半期売上高が27%も減少したと発表した。

コンサルタント会社のベインによると、中国は昨年、世界の高級品支出3620億ユーロ(3938億ドル)の16%を占めた。

しかし、中国では長引く不動産不況と雇用不安を背景に、15日に発表された4─6月期国内総生産(GDP)成長率が予想を大幅に下回った。

高級ブランド品業界ではかねて4─6月期の収益への期待が低かったが、暗いニュースが相次いでいるため年後半の回復期待もしぼんでいる。

ベインによると、中国の富裕層は富を誇示することを避け、控えめなファッションを好むようになっている。

LSEGのデータに基づくロイターの計算では、中国を巡る懸念から投資家は高級ブランド企業株を敬遠しており、このセクターの株式時価総額は3月以来で1800億ユーロしぼんだ。この消失分のうち850億ユーロをフランスのLVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)が占めている。同社は6月に欧州企業としての時価総額第2位の座をオランダの半導体製造装置大手ASMLに譲った。

資産運用会社GAMの高級ブランド投資戦略担当共同マネジャー、フラビオ・チェレーダ氏は、裁量的支出が持ち直す兆しは「まだ見られない」と語った。  

ルイ・ヴィトンやディオールを傘下に持つLVMHは23日、グッチなどを擁するケリングは24日、エルメスは25日に、それぞれ四半期決算を発表する。ビジブル・アルファがまとめた予想平均を見ると、LVMHもケリングも売上高が振るわない見通しだ。

もっとも、超富裕層は相変わらず高級ブランドに大枚を投じ続けており、四半期決算ではトップブランドの好調ぶりが明らかになりそうだ。

ハンドバッグの価格が1万ドルを超えるエルメスは、過去1年間で株価が上昇した唯一の高級ブランド企業。第2・四半期決算では13%の増収が予想されている。

<中国の長引く景気低迷>

高級ブランド業界は長年、中国人の消費に大きく頼ってきた。

中国がゼロコロナ政策を解除した直後の昨年初めには、中国の富裕層と中間層がバッグやブランドの洋服などを積極的に買ったが、不動産危機の深刻化に伴ってすぐに息切れした。

長引く景気低迷を受け、一部のブランドは中国での事業拡大計画を遅らせる可能性がある。ただ、中国で競合ブランドに出遅れているシャネルは、中国本土での新店舗開設に投資し続けると表明している。

UBSのアナリスト、ズザンナ・プシュ氏によると、今年の夏は五輪で混雑するファッションの都パリから客足が遠ざかることも予想され、高級ブランド企業の業績回復は一段と遅れる可能性がある。同氏は、このセクターのオーガニックな(買収等ではなく内部資源による)売上高の伸びが今年4%、年後半は7%にとどまると予想した。  

ロイター
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