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金利上昇の影響を主体別に分析、金融機関は「耐性が改善」=日銀

2024年04月18日(木)17時35分

 4月18日、日銀は、半期に一度の金融システムリポートを公表し、経済主体ごとの金利上昇への耐性の分析結果を示した。写真は日銀本店。都内で昨年9月撮影(2024年 ロイター/Issei Kato)

Takahiko Wada

[東京 18日 ロイター] - 日銀は18日、半期に一度の金融システムリポートを公表し、経済主体ごとの金利上昇への耐性の分析結果を示した。金融機関については、円債ポジションのリバランスを進めていることで、金利リスク量が削減され「金利上昇に対する耐性は改善傾向」とした。家計については、景気改善とそのもとでの金利上昇は「所得や利息収支の改善につながることが見込まれる」と述べた。

リポートでは、日本の金融システムは「全体として安定性を維持している」と総括し、日本の金融機関はさまざまなストレスに耐えうる「充実した資本基盤と安定的な資金調達基盤を有している」とした。

今回のリポートでは、金利リスクと不動産リスクを掘り下げた。金利リスクについては、銀行勘定の円貨金利リスク量が低位に抑制されているとした。有価証券の残存期間が短期化するなど、資産と負債の金利更改期間の差(デュレーション・ギャップ、コア預金を勘案しないベース)は縮小傾向にあるとした。

また、市場金利が一律0.1%ポイント上昇したと想定して、2006年から07年にかけての前回の利上げ局面との比較を行った。それによると、貸出全体のデュレーションが長期化していることから、「変動金利貸出(プライムレート連動)の収益寄与は06年当時を下回る」とした。有価証券収益に関しては、地域金融機関で「短期的な収益改善が期待しにくい」と指摘した。これは、有価証券の残存期間の構成が06年とは変化し、より長い期間のものが多くの比率を占めるようになっているためだ。要求払い預金の取り扱いが増えた分、収益を短期的に圧迫しやすいことも示した。

家計部門の金利耐性については、短期金利が1%ポイント上昇した場合の影響を試算した。家計により財務状況のばらつきが大きいことを踏まえ、年収に対する年間返済額の比率が高い世帯は金利上昇への耐性が相対的に低いとした。

<不動産、局所的ショックでも影響は広範に>

不動産市場の分析では、全国の商業用不動産価格・賃料比率が「(07年の)ミニバブル期の水準を上回っている」と指摘。都心の商業地区では局所的に高額帯の取引が増えているとした。

その上で、海外の不動産市場の調整を契機に都市圏の商業用不動産価格が局所的に調整するシナリオでストレステストを行った結果、金融機関の経済損失は「マクロ的には限定的」とした。

ただ、局所的なショックであっても、全国の幅広い金融機関に影響が及びうると警鐘を鳴らした。信用コストと評価損の双方から「大きめの経済損失を被る先が少なくない」としたほか、相応の経済損失を被る金融機関の割合も06年当時の4割に対し、現在は8割に上るとした。

(和田崇彦)

ロイター
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